1.夕焼けに問う
2012/05/10

「XとYは=ですか?」
「どの問題だい?」

声のした方を振り返る。
彼女は窓際に立ち、夕焼に染まる街並みを眺めていた。
彼女の手には、教科書や参考書らしきものを持ってはおらず、手ぶらだった。
わからない問題への質問だと思っていた僕は戸惑った。
戸惑う僕に対し、彼女は振り返りもせず、背筋を伸ばしたままもう一度言った。

「XとYは=ですか?」
「えっと、それは、」

困惑し口ごもる僕を、彼女はやっと振り返った。

「先生」

しかし、窓から差し込む夕日で彼女は逆光になり、表情は見えなかった。
彼女の真っ黒な髪や、紺色の制服は夕日で橙に染まっていた。

「先生は、ひとりですか?」

だが、確かに、彼女の声は泣いていた。



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