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 拍手2012/2月







「……? 甘い、におい」



昨日、テストの点数が悪いだの授業中に居眠りをしてるだのとイチャモンをつけやがったクソ先公が、十代目に大量の課題を出しやがった。

取り敢えずその先公は後日果たすとして、今日は十代目のお宅にお邪魔して課題をお手伝いさせて頂く約束をしている。

だから十代目のお好きな甘いものでもお土産に持って行こうと商店街をフラフラしてたら、ふと甘い匂いが鼻を突いた。

振り向いた先は赤い色に統一されて、ハートやらリボンやらと装飾されたコーナー。



「San Valentino…か……」



そういえばもうそんな時期か……いや、勿論忘れていたなんて事、絶対ありえねぇ。

お、俺だって……その、お、お慕いしている方がいらっしゃる訳だし……

ただ、問題は……



「手作りか、市販か、だよな?」

「っっっ!!??じっ、G!?」



いつの間に現れたのか真っ赤な髪をしたこいつは、初代ボンゴレボスT世の嵐の守護者兼右腕だ。

んで初代様曰く、恋人…らしい…。

……初代様は一体、こんな目つきが悪いガサツな野郎のどこがよかったのだろうか……



「おい隼人?てめぇ思ってる事が顔にでてんだよ…?」

「って…!!!G!何しやがる!?」

「チョコすらまともに溶かせねぇ様な奴に、ガサツだのなんだの言われたかねぇなぁ?」

「う゛っ…………」



去年の2月。
俺が一方的に想いを寄せていた頃、季節柄バレンタインの話になった時だった。



『なんか、手作りっていいよね。気持ちがいっぱい詰まってるみたいでさ』



あの方はそう顔を綻ばせながら仰ったんだ。

いくら好意を抱いていると言っても、日本の常識の中ではとてもじゃねぇが俺がチョコを渡せる筈もねぇ。

でも今年は違う。

恐れ多くも想いが通じ合った今なら、俺も気持ちをチョコにのせてあの人に差し上げる事が出来る。

だからこそ、一番喜んで頂ける方法でお渡ししてぇのに……



「チョコを溶かすだけで、キッチン半壊させたのはどこのどいつだったっけか?」

「……………」



………血っつうのは争えねぇよな…

最終的に出来上がるものはどうであれ、そこまでに至る事が出来るだけ姉貴の方が上かもしんねぇ…。
まぁ出来上がったもんは殺人の道具にしかならねぇが。



「諦めてソコで売ってんの、買えばいいじゃねぇか」

「………それじゃ意味ねぇんだよ」



いや、意味なくはない。
あの方なら、たとえ飴玉一つだって最高の笑顔を俺に向けて、ありがとう、そう仰ってくれるだろう。

誰よりも心の優しい方だから。

あの人が望むカタチで、チョコを渡して喜んで欲しいと思うのは俺のエゴだ。

わかっちゃいるが……



「……仕方ねぇ。手伝ってやるよ」

「…………は?」



手伝うって……



「バレンタインチョコってやつ、作るの手伝ってやるよ。手作りがいいっておまえの気持ち、わからなくもねぇからな」

「G……」



式たりは違えど、イタリアだって最愛の人に贈り物をするのは日本と変わらない。

初代様の恋人だというGも、イタリアで毎年贈ってたんだろうか…手作りの………



「つかテメェ!!料理出来んのかよっ!?」

「は?当たり前だろ」

「〜〜〜〜っ何でもっと早くそれを言わねぇんだよっ!!!」



こいつがもっと早く言ってくれりゃ、こんなに悩まなくて済んだってのに!!



「あー……言おうとは思ったんだが、何せチョコを溶かすだけでああも見事に鍋を12個無駄にしたり、キッチンを3回も半壊にさせられるとな…」

「ぐっ………」



な、何も言い返せねぇ……



「ま、それも今日で終わりだ。言っとくが手伝うっつっても作んのは隼人、おまえだからな」

「…当然だ。テメェが作ったもんを差し上げたって、それこそ意味がねぇ」

「わかってんじゃねぇか。俺の指導は厳しいぜ?」

「臨むところだ」



Gの指導がどうだとか、そんなもんどうだっていい。

12個鍋が無駄になろうが3回台所が半壊しようが、それもどうだっていい。


柄にもなく願うのは、貴方が喜んで下さる姿。

その為には、



「ごめんください!」

「獄寺君!いらっしゃい!!寒かったでしょ?さ、早く中に入って!」

「はいっ!お邪魔します!」



あと何個鍋を無駄にしようと、台所を半壊させようと、Gの指導がどうだろうと、十代目っ!
俺、精一杯頑張りますっ!!








end 

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