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  あなたに微笑む







「さぁ!花見に行くぞっ!」




今朝ジョットは唐突にそう言った。




「この唐揚げというものは美味しいな!むっ!こっちの卵焼きというのもなかなか…」

「ちょ、ジョットさんもう少し落ち着いてっ…」

「う゛っ!?」

「しょ、初代様っ!お茶です!」

「…ほら、言わんこっちゃない」


今俺達はデーチモのママンから教えてもらった花見の名称だっつー場所までやってきてる。

こういう時のジョットは尋常じゃねぇ位行動が早い。
デーチモがなんか文句言う前に既に弁当(デーチモのママン手作り)やらレジャーに必要なもんの準備を済ませ、後はもう出かけるだけの状態だった。

コイツの気まぐれは今に始まった事じゃねぇから、もう今更ツッコむのも馬鹿らしいと思ったがやっぱ一言位言わねぇと気が済まない。


「つか何で唐突に花見なんだよ?毎度毎度もう少し前置きっつーもんを、」

「前置き?そんなもの今が春で桜が見ものだという事で十分ではないか?」

「……………」


あぁ、やっぱ俺が馬鹿だったな。


「むぐっでーひも!しょのしょーせーひもっ」

「はいはいわかりましたから!誰も取りませんから!」

「しょ、初代様っ、あまり慌てますとっ…」


……つかこれ、花見っつーのか?
花見っつーのはその言葉通り桜の花を見て……


「あれ?Gさん何処に行くんですか?」

「ちょい散歩に行ってくるわ」

「むっ!おれもっ…」

「テメェは大人しく食ってろ!」


両手いっぱいに食い物を持ちながら付いて来ようとするジョットを制して、その場を離れた。


「桜……か」


淡い色をした小さい花が枝一面に咲いて、まるでその木自体が一つの花みてぇだ。
名所と言うだけあって敷地内いっぱいに植えられた桜が、風に吹かれて花びらをあたり一面に舞い散らす様は幻想的と言ってもいい。

が、正直桜は見たくなかった。

ジャッポーネでは春を象徴する花。
始まりを象徴する季節。
だが俺には……


「G」

「……ジョット」


終わりの季節だ。


「どうだ?桜は綺麗だろう?」

「……あぁ」

「俺は桜が好きなんだ」

「テメェの愛した国の花だからな」


ジャッポーネに行くと言ったコイツと、俺は別の道を選んだ。
ミモザが街中に咲き乱れる春だった。


「……ここにある桜は山桜と言ってな、G、山桜の花言葉を知っているか?」

「……知る訳ねぇだろ」


この花を好きだと思った事なんてねぇのに。

ジョットと共に行かないと決めたのは俺だ。
だから今更何も言うつもりはねぇし、恨んでる訳でもない。
ただジョットの愛したこの国の、ジョットにとって始まりの季節に咲くこの花を、好きになれないだけだ。


「"あなたに微笑む"といってな、」

「…………」

「ずっとこの花を見る度に、おまえの事を想っていた」

「……………は?」


何言ってんだ?
何でその花言葉と俺が関係あんだよ。


「この花言葉を聞いて、真っ先に俺に微笑んでくれるGの顔が思い浮かんだんだ。そうしたら、桜を見る度におまえが微笑んでくれている様でな」


お得意の超直感か、俺が疑問に思っていた事をジョットは答えていく。


「ずっと、Gと共に見たかった。…なぁG、もう一度、またこの季節から始めてくれないか」

「ーーーっ…」


何を、なんて聞くまでもない。
終わったと、あんな大昔の事に固執してるのは俺だけだと、そう、思ってた。
ジョットはあの時に新しい生き方を始め、俺はコイツの過去になったんだと…


「寂しい思いをさせた。だけどもう二度とおまえを離さないと誓う」

「……ばっかじゃねぇの、離さないも何も、もう俺ら死んでんだろ」

「あぁ、死んでも共にいられるなんて幸せだと思わないか?」

「っ………」


馬鹿なのは俺だ。
離れても終わったと思っても、結局コイツを忘れられないでいた。


「G,愛してる」

「…仕方ねぇな、今度はテメェの傍にいてやるよ」


ジョットの懐かしい体温に目を瞑ろうとした時、ふと山桜が視界に入った。

その瞬間、ジョットの言ってた花言葉の意味がわかった様な気がした。












「はぁ、やっとくっついた」

「えっ!?十代目もあの二人の事知ってたんっすか!?」

「まぁね、ずっとジョットさんに相談の様なものをされてたからね…って獄寺君も!?」

「はい、まぁ…俺のはなんていうか勘なんすけど、」

「あぁーまぁ、あの二人みてたら」

「「気付「くよね」「きますよね」








end 

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