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  ポッキーゲーム








「十代目!!ほんと、すみません!!すぐに先公の奴果たしてくるんで!!」

「いやいやいや、俺の事は全然気にしなくていいから、お願いだから果たして来ないで!」





勉強は出来るのに授業態度、生活態度、共に最悪な獄寺君は、当然担任から呼び出しを受ける訳で…。

今すぐにでもダイナマイトを取り出す勢いの獄寺君を宥めて、漸く生活指導室に送り出す。



でもあれからかれこれ2時間が経つ。

既に陽は赤く、俺以外誰もいない教室を染め上げる。


いつもは俺が補習やら係りの仕事やらで獄寺君を待たせちゃってるから、俺が待つなんて新鮮で全然苦じゃないんだけど、流石に心配になってくる。

どうか、獄寺君が担任を果たしていませんように…。



「あれ?ツナくん??」

「あ、京子ちゃん!」



教室のドアが開いたと同時に入ってきたのは、待ち人ではなく京子ちゃんだった。

もう校舎に残ってるのなんて俺と獄寺君、あとは先生たちと部活動に励んでる生徒だけかと思ったのに。



「こんな時間にどうしたの?」

「花たちとポッキーパーティーしてたらこんな時間になっちゃって」

「ポッキーパーティー??」



そう言う京子ちゃんの両手には、色んな味のポッキー箱がいっぱいある。



「うん、ほら今日は11月11日でポッキーの日でしょ?だからそれぞれ好きな味のポッキーを買ってきて、みんなで食べてたの!」



そういえば朝のニュースの"今日は何の日"でやってたような…



「そうだ!ツナくんにもポッキーあげるね!私、まだこんなにいっぱいあるから」

「え、いいの?ありがとう!」



京子ちゃんにお礼を言って、色とりどりの箱のうちから一袋受け取る。

ポッキーの日かぁ。



「そういえば、ツナくんこそこんな時間までどうしたの?」

「ん?あぁ、それがね…」

「じゅうだいめぇー!!!!大変お待たせしました!!!」



言い掛けた所でタイミングよく俺が此処に居た理由が帰ってきた。



「…獄寺君待ってたんだ」

「ふふ、そうみたいだね」

「っ!?ささ…がわ?」



あ…獄寺君の顔が少し不機嫌に歪んだ。



「それじゃあツナくん、私帰るね。獄寺君もバイバイ!」

「………おう」

「うん、気を付けてね!」



獄寺君とは正反対な、にこにこした顔で京子ちゃんは教室を出て行った。



「獄寺君おかえり、ちゃんと果たさないで我慢した?」

「………」

「獄寺君?」

「あっ、はい!お待たせして申し訳ありませんでした!!」



そう言うなり案の定獄寺君は土下座をし始めたから、慌てて止めに入る。



「謝らなくていいよ、いつもは俺が待ってもらってるんだし!」

「はい……あ、あのっ!」

「ん?」



獄寺君がすごく何かを言いたそうに、口を開けたり閉じたりしてる。

だいたい予想はつくけど、敢えて助け舟は出してあげない。

だって獄寺君の口から言って欲しい。
獄寺君にはその権利があるんだから。



「あ、あのっ!!さ…笹川とは、何…を、されてたんすか…」



最後の方はうっかり聞き逃しちゃいそうな程か細い声に、真っ赤だけど不機嫌そうな顔。

意地悪しちゃったな、なんて思いつつも、獄寺君のあからさまな嫉妬に愛しさが込み上げてくる。



「へへ、さっき京子ちゃんにポッキーもらったんだ」

「へ?」



たいして問いの答えになってない俺の返答に、呆けた顔をする獄寺君。



「はい、あーん」

「え、ちょっ、十代目!」

「そのままくわえててね?離しちゃダメだよ?」



半ば無理矢理獄寺君の口にポッキーを一つ差し込んで、



「ポッキーゲーム、しようか」



すかさず反対の端をくわえる。



漸く俺の意図がわかったのか、夕陽にも負けない位に顔を真っ赤に染めた獄寺君が慌て出す。



「じゅ、じゅうらいめっ!!」

「ほら、動かないで」



それでも律儀に俺の言いつけを守って端をくわえてる唇目掛けて、着々と食べ進めていく。

あと2センチ。

あと1センチ。



「じゅっ……んっ…」



触れたと同時に開いた口に、今度は舌を差し込む。



「んんっ…は、ふ…」

「……ん…」



ポッキーを二人で分け合う様に、お互いの舌でチョコを溶かして絡め合う。



「……はっ…」

「……ポッキー甘いね」



確かに俺は京子ちゃんが好きだった。

だけどいつからだろ、"好き"が"憧れ"と知り、本当の"好き"を知ったのは。


昔の俺ならポッキーなんて些細な物でも京子ちゃんに貰ったというだけで、永久保存しかねない。

それなのに今日貰った時なんて、ポッキーを使って獄寺君とこんな事することしか頭に無かった。



「ここで獄寺君の事待ってたら、たまたま京子ちゃんが来たんだよ」

「………」

「それで今日はポッキーの日だからって、ポッキー貰ったんだ」

「………」

「俺、甘いの好きだからさ」

「……はい」

「だから獄寺君と食べようって思ってたんだ」



だって俺は知ってるから。



「獄寺君とだと、ただのポッキーでもすごく甘くなるんだよ」



チョコよりも何よりも"君"が甘いんだって事。



「……じゅうだいめ…」

「なに?」



誰よりもどんなものよりも甘くて



「もっと…ポッキーゲーム、しませんか?」

「うん、いっぱい食べよ?」



大好きでどうしようもない人。




























「あの、十代目」

「ん?なぁに??」

「あ、明日休みですし…その…よ、よろしければ、うちに泊まりにきませんか!」

「!!うんっ!じゃあポッキーいっぱい買ってまた一緒に食べよっか!」

「はいっ!!」












end 

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