trick or …? |
「おぉー!!みんな極限に似合うではないかー!!」 「クフフ、そんな貴方もお似合いですよ、そのフランケンシュタイン」 「……君達、どうして群れてくるの。咬み殺されたいの?」 「まぁまぁ雲雀!おまえも似合ってるぜ!吸血鬼のコスプレ!!」 「山本氏、コスプレって…そ、それに、仮装というより、まるで本来の姿に戻ったかの様に自然すぎて怖いんですが…」 「あはは!!ランボは本当に怖がりだね。みんな似合ってるよ!今日は折角のハロウィンだから楽しんでね!」 10月31日。 年に一度のハロウィンの日だ。 毎年ボンゴレでは思い思いの仮装をした同盟ファミリーが集まり、絆を深める為盛大なハロウィンパーティーが行われる。 勿論、山本たち守護者もそれぞれ仮装をしてる。 山本はゾンビ男。 お兄さんはフランケンシュタイン。 ランボは雷様。 雲雀さんは吸血鬼。 骸は……どっかの貴族の幽霊的なアレかな? 「綱吉君、言っておきますが、私の衣装はかの有名な大海賊…」 「え、あ、あぁ…うん、やだなぁ、わかってたよ」 「…………」 「それより、ツナは普通の格好なのな。コスプレしないのか?」 何で骸が俺の考えをわかったのかは置いておいて、みんなが仮装する中、俺だけは至って普通のシンプルなスーツだ。 理由はちゃんとある。 「うん、俺はみんなに悪戯されない様にプレゼントをあげる係り!!」 「クフフ、いい心掛けですね綱吉君。ではtrick or treat」 「トリック オア トリートなのな!」 「はいはい、骸にはこれ、山本にはこれね!」 骸にはアンティークの懐中時計、山本には日本にいた頃によく飲んでいた、お気に入りの日本酒を渡す。 「ほう、なかなか良い趣味ではないですか」 「うわ!懐かしいなぁ、これでよく親父と飲んでたんだよ!」 「気に入ってもらえてよかったよ。山本も山本のおじさんも飲べぇだからね!ほら、みんなも俺に魔法の呪文唱えないと、プレゼントあげないよ?勿論、雲雀さんもです」 そう強調するとすごい勢いで雲雀さんに睨まれた…けど、負ける訳にはいかない。 同盟ファミリーとの絆も大切だけど、俺としてはやっぱり普段死と隣り合わせで戦ってくれている仲間たちに、少しでも血生臭い日常を忘れて楽しんでほしい。 だから今回は俺だけ悪戯される人間として、みんなにささやかなプレゼントをしたいんだ。 「極限にとりっく おあ とりーとだー!!」 「ぼ、ボンゴレ!!trick or treat!!」 「……………早くくれないと咬み殺すよ」 「……ま…いいか。お兄さんには使ってるジム設備に最新のマシーンを追加しておきました。ランボには有名シェフお手製デザートを今日から一週間食べ放題。雲雀さんには由緒ある日本職人が織った着物です」 贈ったものは完全に俺独断で選んじゃったから少し不安だったけど、なんとかみんな喜んでくれたみたいだ。 お兄さんとランボは目をキラキラさせてるし、雲雀さんなんて、 「…ま、仕方無いからもらっといてあげるよ」 とかなんとか言ってるし。 「おし!!ツナ、今度これでまた飲み比べしようぜ!」 「ん〜飲み過ぎると隼人に叱られるんだけどなぁ…ま、いっか!」 「そういえばその獄寺はどうしたんだ?」 そう、今守護者が集まるこの場には唯一俺の右腕兼、恋人の隼人の姿が無い。 「それがね〜ビアンキが用意した衣装が嫌みたいで、なかなか着ようとしないからなんとか説得して今着替えさせてるとこ!」 「ははっ!ツナ容赦ないな〜!!」 「いやいや、だってそれは見逃せないでしょ!?」 しかもビアンキの話しによるとネコ耳隼人だとか!! それは絶対見逃せない、何があっても見逃しちゃいけない。 「でもかれこれ20分は帰ってこないな〜そろそろ迎えに行こうかな」 「おう、いってらっしゃい!」 「うん、じゃあちょっと抜けるね。みんなは楽しんでて!」 「ごゆっくりな〜!!」 他の仲間にも挨拶して早速隼人の自室に向かう。 やっぱり嫌だったのかなぁ…でも隼人のネコ耳見たいしなぁ…よし、どうしてもって言うなら俺一人で存分にネコ耳を堪能させてもらおう!! ネコ隼人を想像して緩む顔をそのままに彼の自室に向かっていると、その扉の前に三人の人影が見えてきた。 「隼人??」 「っ!?十代目!」 「お、デーチモではないか」 「よう」 「え??ジョットさんにGさん?なんでここに……って隼人可愛いぃいー!!!!」 えぇぇえ!!!なにそれ!!!! その銀の髪と同じ色のもふもふな三角形の耳にもふもふで長めの尻尾!!! そしてそのオプションに相応しくないストイックなスーツが逆にギャップがあっていい!!! 「隼人っ!!可愛い!!可愛いよ、そのネコ男の衣装!!」 「……ネコ男ではなくて狼男です…」 「デーチモ、見事に隼人君しか目にはいってないな」 「あぁ、どっかの誰かさんを見ている様だぜ」 やっぱり隼人は着替えさせよう、こんな可愛い隼人を他の人に見せるなんて勿体無さ過ぎる。 と、いうか… 「……ジョットさんとGさんは何故此処に…」 「おぉ、漸く気付いたか。いやな、何やらハロウィンパーティーなるものを開催していると風の噂で聞いたものだから、少し楽しんでこようかと思っていたところに隼人君がいてな。なぁ?G」 「わりぃな、こいつ自分の現状理解しきれてないんだわ」 はぁ……まぁそれは今に始まった事じゃないからいいんですけど、なんていうか、俺よりも先にこの隼人の姿を見たのかと思うと、こう沸々とくるものがあるんですけど! 「それよりデーチモ聞いてくれ!今日はハロウィンだろう?だからGに例の呪文を言ったら、飴玉なんか渡してくるんだ!!!」 「はい??」 「ハロウィンっつーのはそういうもんだろうが」 全くその通りです、Gさん。 悪戯されるのとお菓子くれるの、どちらがいいと聞かれてるんだから、悪戯されたくない人はお菓子をあげるのが、このイベントのセオリーなんだし。 むしろしっかり飴玉を用意してるあたりがさすがGさん。 「それでは普通のハロウィンではないか!!いいか、G。そこはお菓子を持っていないから悪戯して、が恋人達のハロウィンだ!!」 ぶっっ!!! じょ、ジョットさん…Gさんがそんな事言うと本気で思っているんだろうか…無い、絶対無い。 「……おまえ、大丈夫か??大体そんなB級設定、今時誰もやんねぇっつーの!なぁ?隼人」 「………………」 「………………」 「………………」 「…………まじでか」 え、え??ちょ、ちょっと!!! え、何、何で隼人黙ってんの?何で顔赤くしてんの!? みんなの視線に耐えられないといった感じで、真っ赤な顔をした隼人がみるみる小さくなっていく。 心無しかそのもふもふな耳と尻尾も、気持ちに反応して垂れ下がっている様に見える。 「じゅ、十代目、あのっ…」 「隼人、部屋行こう??という事でジョットさんGさん、俺達はこれで失礼します。良いハロウィンを!」 「えっ!?十代目っ!?」 なんか後ろでジョットさん達がごにょごにょ言ってるけど、そんなのに構っていられない。 隼人の手を掴んで、足早にすぐ近くの俺の部屋に入る。 「十代目!?急にどうされたんですか?じゅう…んっ…」 閉めた扉に隼人を押さえつけて性急にくちづける。 「はぁ…隼人、さっきのあれ、俺、都合の良い様にとっちゃうよ?いい??」 「っ……」 そう問いかけると、より一層顔を赤くした隼人は、けれどもゆっくり頷いてくれた。 「んんっは…じゅ、じゅうだいめ…まだ、パーティーが途中では…」 「ごめん、無理、止められない」 我慢なんて出来ない、出来る筈ない。 そんな可愛い姿で、あんな可愛い考えをしてたなんて知って、我慢なんか出来る奴がいたら是非拝んでみたい。 「隼人可愛い、愛してる。でも珍しいね、隼人がそんな事考えるなんて」 ジョットさんの話しを聞いた時、Gさんは絶対無いと思ったけど、正直隼人もしないと思ったのに。 「ん…じゅうだいめが、ハロウィンを称して、守護者や部下達に何かを贈ろうと考えていらっしゃるのは知っていました」 「え……俺誰にも言わなかったのに?」 「何年、貴方のお傍にいさせて頂いていると思っておいでですか?全てお見通しですよ」 「はは、さすが隼人」 その言葉に、十年という月日を隼人は飽きもせずに俺の傍にいてくれたんだと実感して、より一層愛しくなって大切になる。 「そんな優しい貴方がボスであり、恋人である事が俺の誇りです。俺だけじゃない、そんな貴方だからみんなついてきてくれるんです、命を掛けてでも守りたいと思うんです」 「隼人……」 「だから俺も右腕として、恋人として十代目に何かして差し上げたいと思って色々考えたんですが…」 「それで"隼人"??」 可愛い人の可愛い考えに思わず顔がにやけてしまう。 「っっ!?す、すみません…不甲斐ないですが、何が喜ばれるか思い付かず…せめて俺がして差し上げられる事だったら何でもしようという意味で…」 「うん…ありがとう、隼人。嬉しい、一番嬉しいよ」 「じゅうだいめ…」 本当に俺にとっては何より嬉しくて、けれど際限無く欲してしまうプレゼントだ。 それに…… 「まぁバレちゃってたけど、隼人にもあるんだ、プレゼント」 「えっそんな俺はっ!!」 「…というより俺が隼人にもらってほしいんだ」 「え…?」 「明日の休日と、これから先の俺の時間を全部、隼人にあげる。もらってくれない?」 「っっっ!!??」 実は同じ様な事を俺も考えちゃってたりとかしてた訳で。 「だからさ」 「ふふ、はい」 「隼人」 「綱吉さん」 「「 trick or treat 」」 「いつまでふてくされてんだよ」 「だって…デーチモだけ今頃ハロウィンにぴったりな甘いとろける様な時間を過ごしているんだぞ、ずるいではないか」 「ずるいっておまえ…」 「ずるい」 「……はぁ…おまえは何が欲しいんだ」 「G?」 「生きてた時の俺の時間も、今の俺の時間も、これから先の時間だって、全部ジョット、おまえのもんだろ?これ以上、何が欲しいっていうんだ?」 「っっ!!??Gっ!!大好きだ!愛している!!俺の時間だって全ておまえのものだ!!」 「あぁ、わかってる」 「や、山本氏……」 「あぁ!どこもかしこもお菓子みたいに甘いのな!!」 「……というか、何で初代ボンゴレたちまで…」 「まぁいいじゃねぇか!折角のハロウィンだしな!!ハロウィンは楽しく甘くなくちゃな!」 「はぁ……」 |
end |