素直になれない!




大事な学校の休日に。
「いいからこい。とにかくこい。」
と、なまいきな恋人、安形から電話があってきてみれば・・・

「キリぃー!!」
「うっわ。」
いきなり玄関で靴を脱いだ瞬間に抱きしめられた。
「なんだいきなり!!!」
「お前不足。」
「は・・なんだそれ・・・って、ひっ!!」
家に入ってすぐ。
いきなり抱きしめられ、いきなり服の中に手を入れられ・・・
「キリがほしーなー」
なんて甘えた声で俺の体をベタベタとまさぐってくる。
「ちょっ・・・頭おかしいだろあんた・・・ここ玄関だぞ。」
「あ?ベッドに行きたい?なんだ、おめーも欲求不満か。」
「一言も言ってねーよ!!」
自分の服の中で動き回る指の感覚に耐え、そう突っ込むと、黙りこくって俺の首に顔をうめてくる。
「・・・・・安形?」
俺が呼びかけると「キリ・・・」と耳元で名前を呼ばれ、そこを甘噛みされた。
「ちょ・・」
そしてそのまま生暖かい舌が耳の中で動く。
瞬間、背筋にぞくっとした感覚が走り、足の力が抜け、がくっとその場に倒れこんでしまった。
「おいおい。こんぐれーでそんなんなるなよ。」
俺と比べて余裕の安形を睨みつけてやると、こいつは余裕で黒く笑い倒れた俺の上にのってくる。
悔しくて悔しくて仕方ないはずなのに。

「キリ・・」

静かに名前を呼ばれ、優しく頭を撫でられるだけでひどく安心するのだ。
「抵抗すんなよ?」
そういった安形に後頭部を手で支えられたまま、耳朶を優しく舐められる。
「ひっ・・!!」
ぬるぬるした感覚がそこを往復し背筋に甘い感覚が走る。
そしてそのまま首元の一番上のボタンをはずされ、舌はそのまま首筋、鎖骨へと移動していく。
「お、おい・・・まっまてって・・!!」
「だめ。まてねーよ。」
「だっ・・・ほんとに・・・もういいから・・!!」
俺は俺の上にいる安形を強引に引きはがして上半身を起こした。

その後、俺は上手く安形に丸め込まれて二人でベッドまで移動した。
隅に座って落ち着くととりあえず俺はきてそうそうどうしてこんなことをしたのか聞き出した。
すると・・・
「お前が素直にあまえてこねーからだろ?」
「はぁ!?」
「本当は俺に甘えたくてしかたねーくせに意地を張ってばかりでいるから、そんな加藤君のために俺から誘ってやったんじゃねーかよ。ま、さっきも言ったように俺もお前不足だったんだけど。」
「な・・・なななな!!」
悪戯な笑みを浮かべて俺の顔を覗く安形。
自分の顔が熱くなるのはそれが図星だからだ。
安形はそのまま俺から顔をそらさずに「大丈夫だからな。」と、よくわからない言葉を吐いた。
「ん?大丈夫って・・なんだよ。」
俺が問いかけると安形は静かに「甘えていいから。」と呟いた。
「え?・・・・わっ!」
驚く暇もなく、その場に押し倒される。
またさっきと同じように上に乗られると予想するが、安形はそうせずにベッドに寝転がる俺の横に同じように横になった。
「うっし!これでよし、と。キリ、おいで。」
「は!!?」
言いながらたのしそうに笑いながら、安形は腕を伸ばしてきた。
「腕枕してやるからこいよ。」
「頼んでねーよ!!!!」
「まだ、言うか。」
俺の態度に呆れる安形に言い返そうと「うるさい」と、口にする前に。

ぎゅううっ!!

「あ・・・」

口での抵抗はいくらでも。
でも、体はどこまでも素直で。

「せっかく甘えさせてくれる相手がいるんだから素直に甘えとけ。」
そういって抱きしめてくれた相手の腕の中は暖かい。

「安形・・・」
「お前は忍者の家系でずっと一生懸命修行していて、真面目なお前は「甘える」ことが「弱いこと」とでも、思ってたんだろ?」
「うっ・・」
「お前のその考え方を否定するつもりはねーけどよ、たまにはいいだろ?」


俺がこいつに素直になれない理由。
それはたぶん、こいつが俺の事を甘やかして自分を制御できないからだ。

FIN






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