僕と猫会長






「ただいま戻りました。」
いつも通り放課後の校内の見回りを終えた僕 は、生徒会室に戻る。 すると目の前にはいつも通りじゃない光景が飛び込んできた。
「かっ会長!?」
「おー、椿ぃー。」
いつもみたいにゆったりと、へらっと笑った会長。 なんでもないかのようにふるまっているけど 。
「なななななんですかその恰好はー!!」
おそらくまた、中馬先生の薬だと理解して脳を整理する。 だけど・・・
「こんなになってしまって・・・。いったいいくつ薬を飲んだんですか?」
「うーん。なんかよくわかんねーけど、いっぱい?かっかっか!」

そうやって笑う会長の体は幼く小さくなっていて、おまけに猫耳と尻尾が生えていた…。

****

「あ?安形を旧に戻す薬?ねーよ、今はな。」
「なっ!」
夕暮れの実験室で。 僕は中馬先生の言葉に、呆れと多少の怒りを覚えた。
「ないってどういうことですか!会長はもうあのままなんですか!?」
「いやいや、ま、落ち着け椿。今はって言っただろ?ちゃんと作ってやるからまってろよ。あの馬鹿俺の「スーパーミックスジュース 」飲んじまったからな…。あの薬を飲んだやつを元に戻す薬を作るのには少しコツがいるんだよ。明日までに作っといてやるから、とりあえず今日はお前あいつ自分の家つれて帰れ。」
「は、はぁ・・。わかりました、失礼します。」
ゆっくりとドアを開け外にでると、足元にはぶかぶかの制服を着て、僕を見上げる会長の姿があった。
「会長・・。」
「はなし、聞いてたぜ。」
「え?」
「帰ろうぜ椿。」
「あ、はい。」
「椿。」
「なんですか?」
「この恰好だと歩くのだりーんだよ。抱っこしてくんねーか?」

いつにも増して甘えてくる恋人。

「まったく・・。」
ゆっくりとその体を抱き上げてきゅっ・・と抱きしめる。 いつもと違う恋人の感触。

腕に収めた体がたまらなく愛おしくて。 僕はこっそりその柔らかい耳に触れた。

こうして僕と小さくなった会長の一夜が始まるのだった。


とりあえず家に帰るまで他の人間に見られないように生徒会室にあった大きな鞄に幼くなった会長をつめた。

「苦しくないですか?」
「おー。あ、なー!椿ぃー。」
「ちょ‥怪しまれるので鞄の中から話しかけないで下さい。」
「へーい。」

***

「おっ!部屋ついたのか?椿っ!」
「あ、ああ!ごめんなさい。今開けますね、 会長。」
鞄のジッパーをゆっくり開けて中をのぞくと 、ほんのり汗をかいてこちらをのぞく会長がいて。
「‥苦しかったですよね?すいません、今外にだしますから。」
脇をかかえて鞄からだす。
「よいしょ・・と。」
鞄からでると会長はふわあ‥と小さく欠伸をして、目の前にベッドがあることを確認するとぴょこんと飛び乗って猫のようにまるくなり 、そのまま目をとじる。
「え‥まさかもう眠るんですか?」
「だってねみーんだよ。それに・・」
「・・?」
「せっかく椿の家に泊まれるのに夜寝たらもったいねーだろ?」
にっこりと意地の悪い笑みをこぼした幼い体の恋人。このあとの展開がなんとなくわかってしまって・・ 一人で勝手に体を火照らせたのは、気が付かれてない・・かな?

***

宿題が多くてなかなか終わらないからご飯は自分の部屋で食べる。まさかこんなベタな嘘で猫をかくさなくてはならなくなるとは思わなかった。
「かいちょおー?起きてますか?」
晩御飯をもって自分の部屋に向かうと僕のベッドの上で丸くなって眠る会長が見えて。
「寝てる・・」
しかたなく勉強机に晩御飯を乗せたおぼんを置いて眠っている会長をながめた。 すると、会長はくるりと寝返りをうって壁側をむいてしまい、なぜかそれをおいかけるように僕の体は勝手にベッドに乗りあがる。 ぎしっと、音を立てて体重をかけると、その音に気が付いて
「うーん」と会長の体がこちらに向いた。そのままゆっくりと瞳が開き、寝起きの会長と目があった。
「つばき?」
目をこすりながら、むく・・と、起き上がる。
「やっと起きましたか。」
「あれ?なんかすげー寝た・・」
「もう夕食の時間ですよ?」
「おお、もうそんな時間か・・よっこらしょっと。」
ぴょこんとベッドの上からおりて床に座る会長。僕はさっきもってきたおぼんを床におく。
「どうぞ。」
「おー。んじゃ、いただきます。」
「食器もてますか?」
「もてない・・・」
「え・・」

「食わしてくれ。」

そういって小さな口を開ける会長でした。

「おー、うめえ」
小さな口を開いて。 幼い手で食器をもつ。
「おっと・・!」
「わっ!やっぱりその体では持ち辛いですよね。僕も支えますから。」
茶碗を持つ会長の手を支え、それが落ちないように固定する。
「わりーな、なんか。」
「いえ。」

***

「あー・・なんか、眠くなってきちまったな ー。」
「え・・また、ですか?」
「うーん。なんか、だりい・・。あ、そうだ 。椿、ベッドの上で抱っこしてくれねえ?」
「いいですけど」
ベッドの中心で正座をして、そこに会長を乗せる。
「これでいいですか?」
「んー・・なんか、違うんだよなあ」
「ち、違うんですか?」
「あ!そうだ!椿ぃ!」
「わっ!」
膝に乗っていた会長にいきなり首元に抱きつかれ、背中からベッドに倒れてしまった。
「かっかいちょ・・」
「はっ!小さくなってのにこんなんでもお前の事押し倒せるんだな。」
「こいうのって押し倒したっていうんでしょうか」
「ま、なんでもいーじゃねーか。そんなことより試してぇことがあるから・・動くんじゃねーぞ?」
「た・・試す?」
「いつもとは違う感覚だろうし、そうしたら反応もいつも変わると思ってよ。」
「違うって・・何がですか?」
「俺の舌。今猫のしたみたいにざらついてんだ。」
「・・・!」
「せっかくこんな機会だし?この舌でお前のことあちこち舐めてみてぇなーって。」
「なっ何言ってるんですか!!なっ舐めるって!」
「顔まっかだぞ。いつも流れでいろいろ舐めてんだろ?今更照れんなって。」
そこまで言って、会長は僕に顔をよせてくる 。 こうやって見つめられるとどこも拘束されていないのに動けなくなる理由はわかってる。いつもいつもほんとは心のどこかで貴方に期待しているから。
「会長・・・」
「椿、」
「・・・っ!ひっ・・やあ・・あ・・」
子猫のざらついた舌は僕の耳朶を舐めあげ、 耳の後ろを全体を使って濡らされる。
「んんーっ!」
むずむずとくすぐったい感覚が何度も敏感な部分をはしり、背中がゾクゾクと悲鳴をあげる。しばらくすると舌は耳から首筋に移動し、ぺちょ・・と、必要以上に水音を立ててそこを舐められる。いつも違う彼の舌の感触。
「よかった。逃げられたら引っ掻いてやろうかと思ったけど。」
「ええっ!?」
「気持ちいいみたいだな」

僕と再び目をあわせ、にっと笑う会長に少し苦笑してから、

「貴方だからですよ」

と、今度は自分から誘ってみた。


そして・・・。

「っ・・・!!だーかーらー!!足元に潜らないでください!!」
「なんでだよ」
「寝ている間に僕が蹴り飛ばしてしまったらどうするんですか!!」
「それは気にすんな。俺が悪いんだ。」
「ぼっ僕がいやなんです!貴方にそんなことしたくありません!!」
「俺はここにいてーの!」
「そうですか・・・じゃあもうしりません」
「おうそうだ。ほっとけ。」

夜、ベッドの中で。 なんてくだらない喧嘩をしてるんだろう。

「僕はもう寝ますからね。会長も早くねてくださいね?」
「へいへい」

もうなにも気にしない!

ゆっくりと瞳を閉じて眠る体勢に入る。 すると。
「う・・・うわあ・・ちょっ・・・」
その直後に足の裏にぬるりとした違和感が襲った。 ざらりと濡れたそれがなんなのかすぐに理解して顔が火照る。
「なっなにしてるんですか!」
「椿の足舐めた。」
「やめてください!」
「やだ。」

なんて…わがまま。

「尻尾は?」
「し・・尻尾?」
「そ。せっかくだから使ってやろうかなーって。」
「んっ・・」
ゆっくりと僕の足首に絡まる猫の尻尾。 今日自分の体の一部になったばかりのこの尻尾を会長は器用に使って僕の体を刺激する。 こういうときはこの人の頭脳のできにイライラする。 小刻みに動いて肌にむず痒い感覚をあたえられる。 いっそ会長をそこから引き離して行為をとめてやればいい。 けれど、抵抗してさらにあちこち舐められたり、擽られたりしたら困るので、会長があきるまで僕は足元の感覚に耐えながらなんとか 、寝ようとするのでした。



FIN






「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -