久しぶりにいやな夢を見てもうた。薄い布団からゆっくり起きあがると、スウェットはじっとり汗でぬれていて、思わずため息。あれは何やかんや曖昧だった小春との関係が、ちょっとずつ変わりつつあった時期だった。今や手の届かないところにいる小春のこと、俺ははよ忘れたいってのに。 となりですうすうと気持ちよさげに寝ている後輩は、それをまったくさせてくれへん。 財前の金で買ったでっかいテレビにはよく小春が映るし、財前が持って帰ってくる雑誌の表紙は大体小春やし、そりゃ小春は今やイケメンIT社長として売れっ子やけども。 俺はもういっかいため息をついて、布団から抜け出した。水でも飲んでもっかい寝よ。 「……なにしてんの、ユウジ先輩」 寝起きの低い財前の声。 「……あ、起こしてもうた?」 ゆっくり振り返ると、財前が目をこすりながら起きあがっていた。財前は元々低血圧で、寝起きが最悪なくせに、ちょっとしたことで起きてしまうという意味のわからん体質やったのを忘れていた。 もぞもぞしてたからすぐ気づきましたわ、とかすれた声で財前がつぶやく。 「ごめんな、まだ寝とってええよ。ちょっと水飲むだけやから」 「……アンタうなされてましたよ。悪い夢見たんとちゃいます」 「ま、まあすこし……」 「ほら、こっち来て。いっしょ寝ましょ」 財前が自分の布団をびろんと広げ、俺に手招きをしよる。 「え、いや、おま」 どーいうこっちゃ。財前はきっと寝ぼけとるんやろうけども。 俺はかあっと熱くほてる顔を隠すために、すぐさま財前の布団へもぐりこんだ。 そして当然のごとく、財前は翌日、このことをまったく覚えていなかったのだった。 |