らしくない、と言われたのだ。白石らしくない、と。白石らしい、ってなんやねん。そう思ったら、目頭が熱くなった。俺かて人間やから出来へんこともあるし、やりたないこともある。 けどそれを我慢して、余裕ぶるのが正解なのか?答えはNOだ。 「俺は完璧ちゃう、」 口にした言葉は音になり、案外軽く飛んでいった。千歳がしきりにこちらを確認するような目線を送ってくる。らしくない、そう言ったのを気にしてるようだ。 「白石、すまん」 でかい身体を小さく丸めて、千歳が呟いた。 嫉妬したのだ。千歳がふらふらするから、千歳が女の子と話すから、千歳が好きだなんてあまり言ってくれないから。それを口にしたとき、らしくないと千歳は言った。 「そんなつもりやなかったけん。俺はほんなこつ白石が好きやけど、ただこれはなかなか直らんたい」 放浪癖と浮気癖。 なかなか直らへんのは知っとんねん。それでもいいと言ったのは俺。最後に俺のところへ来てくれるならと言ったのも俺。 「白石、おいで」 大きな羽を広げる鷲。 捕食する者と捕食される者。 「ほんなこつ好きやけん」 耳元でささやかれて、ああ、また負けた。 |