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泣かんといてください。
何度もそう言うのに、ユウジ先輩が泣き止む気配はない。理由はなんやった?もう覚えてへん、覚えられへんねん。俺の脳みそ、だんだん駄目になってく。ごめんなさい、ユウジ先輩。

「財前、財前、好きや。おれ、財前が好きやねん」

ユウジ先輩が何度も俺の名前を呼び、俺を抱きしめる。忘れたない。この温度も、愛の言霊も、ユウジ先輩も。気付けば、泣いていた。

「忘れたってええよ、何度も言えばええんやから。おれ、何度も言うから。財前、好きやでって」

耳元で、そんな言葉。
もっとはよ言うてくれたら良かったのに。何となくそう思った。俺と先輩は、中学時代からの付き合いで、そんで、俺はめっちゃ先輩のこと好きで、何度も告白した。……全部、さっき教えてもろたこと。自分じゃ思い出せない思い出。
昔なら嬉しくて舞い上がるほどの言葉やったんやろな。好き、なんて。その言葉を、長い時間は留めておけない俺の脳みそ。

「先輩、」
「ん?」
「キス、しましょ」
「………ええよ」

唇を重ねた。優しいだけのキス。

「……相変わらず、下手くそやなあ、あんた」
「うっさい、あほ……」

相変わらず、を使うとこの人は、すぐに泣くのだ。懐かしい、懐かしいと言う。そうだ、さっきも。相変わらず、と俺が言うたから。それで泣いたんや、この人は。

それで、


……それで?


「あの、」
「ん?」


あなたのお名前、教えてください。
目の前のこの人は、くしゃくしゃに泣きはらした目を細めて、小さく名前を告げた。

ねえ、ユウジさん、あなたなんで泣いてるん?