聖夜に | ナノ
「くり…すます?」
「そう、クリスマスよ」
いつも通り、骨食いの井戸を通って現代から帰ってきた私は
犬夜叉にプレゼントを持ってきた。
「ん、食い物か!」
持っていた箱を手渡すと、
相変わらずデリカシーの無い発言をする犬夜叉。
「もう!んな訳…あるかもしれないけど今回は違うわよ」
そう、今回は特別だ。
犬夜叉に贈り物をするのは初めて。
会ってすぐの時は、正直言って憎たらしいと思っていて
プレゼントなんか考えたことも無かったし
あげたこともなかった。
「開けてみて?」
彼が箱を開ける前から、頭の中で喜ぶ姿が想像できた。
犬夜叉の長い指が、しゅるっと緑色のリボンを開ける。
「これ、何だー?座布団か?」
中から出てきたのは、さっき思い描いていた物とはまったく違っていた。
肌色の毛糸でできた
―― 腹巻きだった。
「ま、間違えた…」
「ん?何がか?」
「プレゼントよ、プレゼント!」
真っ白の手編みのマフラーをあげるつもりだったのに!
はあ…ショック…。
がっくし、と肩を落としていると、その肩に暖かい手が乗っけられた。
「お前が何をくれようとしたのは解らねぇけどよ…
…俺はお前が居てくれるだけで嬉しい。」
その言葉に、胸に小さな明かりが灯ったような気がした。
(今度、ちゃんとマフラー持ってきてあげよ。)