悲鳴による狂想曲
name change
「ナマエ、この任務が終わったら話しがあります」
ずんちゃっちゃ、ずんちゃっちゃ
紳士と淑女が手を取り優雅に社交ダンスを踊りだすようなヨーロピアン音楽が、誰もいない薄汚いダンスホールに響いていた。
ナマエは今の状況にこれほど似合わない曲はないと思ってはいたが、イノセンスを見つける以外に止める術がないないので仕方なく受け入れることにした。というよりは右から左へ受け流すことにした。もともと優雅な音楽は嫌いだ。しかもアレンと喧嘩中にアレンとの任務につかせるコムイなんかもっと大嫌いだ。しかも喧嘩中なのを知ってて!その時、ヒュンッと右耳を風が通りぬけた。
「ナマエ!」
続けて発射された弾劾をナマエは後ろへ飛び退ける。どうやらAKUMAの弾劾が耳もとをかすめたらしい。今までいた場所には大きな穴があいていた。
AKUMAが奥から姿を現した。レベル1が数体、無機質で冷たい色をしたAKUMAがニ体。どちらもレベル3ってところだろうか。
「不意打ちなんざ、こんの糞AKUMAめ…アレン!」
「何です!!」
「とっととイノセンス持って帰えるよ!」
「当たり前のこと言わないでください!」
「私もアレンに話すことがある!」
「…分かりました!また此処で落ち合いましょう!」
2人は右と左へ飛び、AKUMAへ攻撃を仕掛けた。ナマエはレベル3の攻撃を避けながらテンポよくレベル1にイノセンスの大鎌を振り下ろしていく。
レベル3との攻防戦が続く。気づくとアレンはどこにもいない。くそ、分断させるのが目的か。アレンはイノセンスを見つけ出しただろうか。
「余所見ヲしている暇はナイヨ!」
レベル3は尻尾でナマエの足を絡みとり、空中へ放り投げた。ナマエの体制が崩れる。レベル3はここぞとばかりにナマエを吹き飛ばした。
「うっ…あ」
ナマエは強く壁へ打ちつけられ、数メートル先の壁に大鎌が突き刺さった。
くらくらする頭を横にふり這うようにして続くレベル3の攻撃をなんとかよける。とっさに持っていた銃をレベル3に向けて撃つ。こんなので倒せるわけはないが、一発ごとに数歩分、レベル3を怯ませることはできる。大鎌へ近づくことができる。無いよりはましだった。
あと数歩。
しかし、
カチッ、運命に見放された音がホールに響いた。
「…ッ、」
レベル3はニタァと口を弧の形に滑らせ、銃をかまえていた両腕を切り落とす。血飛沫のなか、ドサッと自分の腕が落下する音が耳に響いた。レベル3はその時を目に焼き付けるべく顔を歪ませ目見開く。
「アレン…ごめ、」
レベル3はさらに表情を歪ませる。
「愛してる、」
ナマエの胸へ鋭い刃を突き立てた。
身がよじれるほどの快感とばかりに、悲鳴ともとれるようなオゾマシイ雄叫びがヨーロピアンをかき消した。
悲鳴による狂想曲
―――――
白兎さま企画の最期の恋は叶わぬ恋となり散り果てたにて。
楽しかったです^^
ありがとうございました。
たまる
2011.01.07
back