黒い真実
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パリン。
無機質な音が病室に響いた。
「…ッ、」
¨AKUMAウィルス浸食型¨
これはAKUMAの弾丸をくらった時と同じようにペンタグルウィルスに浸食され、砕け散る病。しかし、弾丸のそれと浸食ウィルスとでは違う点が2つある。
1つ目はAKUMAの弾丸に当たらずとも場所・時間・性別・年齢関係なしに発症する。
2つ目は浸食スピード。発症してから少しづつペンタグルが浮かび上がっていく。痛みはない。早くて3日、最も遅くて一週間程度で完全に浸食される。
すべての人類にはノアになる可能性がある。伯爵はそれに目をつけ何らかの方法で、何らかの目的で行われていると思われている。
エクソシスト、教団の者、一般人と見境なしに起こる現象。病。感染病ではない。
伯爵はウィルスの対象人を指定することはできない¨らしい¨。これは唯一の救いである。
そしてウィルスの治療方法はまだわかっていない。たった今ナマエの目の前で砕け散った彼女もまた、そのウィルスによるものだった。彼女の浸食は目に見えて進んでおり、いつ砕けてもおかしくなかった。現に彼女の肌は昨日から硬さを増していた。ファインダーとして活躍していた彼女の世話を医療班であるナマエはよくしていた。仲も良かった。ベッドに横たわっていた彼女の最期をナマエが見届けるのは必然的だった。
ナマエの体に嫌な汗が巡った。非戦闘員で、言い方は悪いが死ぬ確率が低いリーバーや自分も、いつかはああなるのだ。今まで幾度なく仲間の死はみてきた。しかし、医療班であるナマエはそれによる死は初めてだった。
ナマエはたまらず、リーバーの部屋へ駆け込んだ。リーバーは一瞬驚いた表情を見せたが、なにが起きたか察したのだろう。震える身体をリーバーは抱きしめてくれた。彼女については日頃からリーバーに話していた。
「ナマエ、」
「しばらく、このままで居させて…」
リーバーが居る。それだけでナマエは安心できる。ナマエの一部。一部がなくなる。リーバーがいなくなることはナマエにとってとても痛いこと。それはリーバーにとっても同じことだった。
「今夜だけ、此処にいてもいい?」
部屋に戻るのが怖い。1人になるのが怖い。リーバーは何も言わずに彼女を抱く腕に力を込めた。
夜明け前、悪夢にうなされ目が覚めた。昨日は安心したのかいつの間にか寝てしまったらしい。隣にいるリーバーを見て胸をなで下ろした。起こさないようにそっと腕からすり抜ける。息を整えながら窓の外を見るとまだ薄暗かった。額に手をあてると結構な汗をかいていた事に気づいた。
「ん、ナマエ…?」
「ごめん起こしちゃった?」
「いや、大分うなされてたけど、大丈夫か?」
「なんだか夢見がわるくて。ちょっとシャワー浴びてくる」
「ん、」
「…うそ。」
シャワー室の鏡に写る自身をみてナマエは目を見張った。
ナマエの右わき腹に薄黒く浮き上がるのは逆さ星。ペンタグル。AKUMAウィルス。
ナマエは狂ったように肌に爪を立てた。しかし皮が剥けるだけで痛みがなおナマエを狂わせた。剥けた皮の下からも薄黒いペンタグルはそんなナマエをあざ笑うかのように顔を覗かせていた。
黒い真実
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蒼原さま企画のsilencioにて。
妄想ふくらみました!!
楽しかったです^^
たまる
2011.01.07
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