13巻発売記念!

「どどどどどど、どうしよう、新ちゃん!匡貴さんかっこよすぎるううううううう!」


コミックス売り場の前で、俺は、肩を掴まれてガクガク揺すぶられている。

今日は12/4(金)。ワールドトリガー13巻の発売日だ。

放課後、教室を出た俺は、廊下で待ち構えていた春先輩に捕まり、本屋に拉致られた。そして今に至る。


「落ち着いてください、先輩」


何とか、春先輩の手から逃れた。


「そういえば3週間程前に『二宮君、次のワールドトリガー13巻のカバー、二宮君に決定したから。次の非番の日にスタジオ押さえておくから、撮影にくるように』って根付さんが来ましたね」


乱れたブレザーとネクタイを整えながら、答えた。
出水は学校が違うから仕方ないとして、犬飼先輩、春先輩と隣のクラスなのに、こうなるのわかってたから逃げたな。


「そうだったの匡貴さん、そんな事言ってなかった!何で内緒にしてるかな、そんな重要な事!知ってれば撮影付いてったのに!」


あ、でも匡貴さん照れ屋さんだからねー、言えなかったんだねきっと! なんて言いながら、春先輩は、にこにこしながら売り場を眺めていた。

・・・確か、撮影の日は春先輩が防衛任務の日だったからむしろ、俺達が二宮さんから口止めされていた。あいつが知ったら任務放り出してでも付いてきかねないから黙ってろ、と。


「あああ、選べないー!この中から一人だけ匡貴さん選ぶとか無理ー!どうしよ、どうしたらいい、新ちゃん!?」


さっきまでにこにこしてたはずの春先輩が、急に苦悶の表情でそんな事を言い出した。前から思ってたけれど、この人、二宮さんの事好きすぎて面白いな。


「はあ・・・ それはそうと二宮さん、今隊室で春先輩が来るの今か今かと待ってるはずですよ」
「匡貴さんが!?」
「ええ。うち、今日は夕方から夜中まで防衛任務なので」
「あ、そういえばそうだった! この本屋からだったら、もう行かないと今日中に匡貴さんに会えなくなっちゃう!」
「というか、俺は遅刻するわけにはいきませんので、もう行きますね。二宮さんには、春先輩はご本人よりも写真の方がいいみたいです、と伝えておきます」


実際にはそんな事言わないけれど。言ったら後で大変な事になるのはわかっている。


「ま、待って新ちゃん!えっと・・・よし、この匡貴さんにしよう!急いでお会計してくるから待ってて!」


そう言って、春先輩は一番手前のワールドトリガー13巻をひっ掴むと、レジへと走って行った。あんなに悩んでたくせに実際は雑に選んだな。まあ、どれを選んでもこの人にとっては全て等しく”匡貴さん“なんだろうけど。


「お待たせ!じゃ、行こう!匡貴さんに会いに!」


そう言うと、今度は俺の手首をひっ掴んで走り出した。やれやれ、この人に振り回される日々は、まだまだ続きそうだ。


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ありがとうございました!


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