短編 2012〜 | ナノ
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「#エロ」のBL小説を読む
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「今日は7人殺った」
「オレは10人、まぁまだまだだよなぁ」

ゲラゲラと大口を開けて笑い合う部下を見て名前は「下品」と一言こぼす。
うるさいから注意してこいとのことらしい。振り返って一喝、よくうるさいと言われる怒鳴り声を響かせてまた名前の隣に戻ってくると、名前はすっきりとした顔をして謝礼を言い微笑んだ。

年はオレと変わらないくせに名前は無駄にちっこい。割とつんけんしているが美人というよりは可愛い顔をしていて、しっかり者なのにどこか子供っぽい。
はらはらとだが雪が降っているため隊服のフードを顔が隠れる程度まで被り、寒さで真っ赤にさせた頬を風から守るためマフラーで半分くらい顔を隠している。
そんな名前が90°くらい顔をあげてにっこり笑った。

「名前、鼻赤ぇぞぉ」
『わっ分かってるわよ!でも寒くて痛くて……』

手袋をした手で口と鼻をまとめて覆いはぁっと息を吐き出す。

『そんな、気になるくらい赤いかなぁ』
「ん゙ん、まぁなぁ」
『こんなに寒い中、こんなに薄っぺらい隊服でいるんだもん。寒くて当たり前よ。ほっぺだけじゃなくて身体の芯から凍りそう。早く城戻りたいなぁ』

出来るだけ軽く任務の邪魔にならないように、尚且つ温かさを保てるという一応最新技術で仕立てたコートも名前にとっては不服らしい。言われてみれば確かに何となく肌寒さを感じる。
帰ればルッスーリア辺りがなにか温かい飲み物を作ってくれるだろう。それに待っているのは暖炉のついた温かい談話室。廊下は風がない以外は外とそう変わらないと思うが、シャワーでも浴びれば一発で暖まる。

『ねぇ、走って帰ろうよ』
「あ゙?なんで任務あとに走って帰らなきゃならねぇんだぁ」
『だって早く城帰れるんだよ?寒いの私嫌だもん、耐えられない。帰ってシャワー浴びたらすぐ布団に飛び込んで今日は寝る』
「しっかり報告書も書けよぉ」

早歩きになっていた名前の動きがピタリと止まる。どうせ任務入りの時間を忘れただとか、指先が冷えるから報告書が書けないーなんて不服を言うのだろう。少し身構えながら名前の顔をそっとのぞき中のもうとしたらがしっと胸倉を掴まれた。
思わず「ゔぉ」だなんて声が漏れちまったじゃねぇかぁ。あまりにも必死な形相の名前に若干体が引き気味になる。胸を掴まれた体制のまま俯いた名前は口を開く様子もない、名前の背に合わせているから正直そろそろ腰が限界を訴えている。それに顔も……近ぇし、なぁ。

『どうしよう、スクアーロ』
「今日はなんだぁ。いつも手伝ってやってるからって甘えてばかりいねぇで自分でも何とかしろよなぁ」
『違うの……どうしよう』

困惑した様子の名前、掴んでいたコートから力なく手が離された。

『私髪ぼさぼさ、だ』
「別に気にするほどでもねぇが」
『ほっぺも鼻も赤い…それに昨日も遅くまで仕事してたから目も腫れてるよね。それに…』
「名前、いったいなんだって……」
『今からボスに会うのに、私ありえないくらい酷い格好してる』
「(あぁそうだ、コイツは……)」

ポンッと右手を名前の頭に置き、左手で着崩れたコートを元通りに直す。フードに積もった雪を軽く払ってやるときゅっと目をつぶる名前。
そのまま唇でもなんでも奪ってやりてぇ。
そんなことをぼんやり思うが後ろからのろのろやってきた隊員達の声によって現実に引き戻される。

コイツはボスが好きなんだ、
たかだか任務報告書を出しに行く10数分のためだけにこんなに悩んじまうくらい、好きで仕方がないんだぁ。


「大丈夫だと思うけどなぁ」
『大丈夫…本当に大丈夫、かな。ただでさえボスの周りには可愛い女の子ばっかりだし……』
「ただ化粧が濃くて少し着飾ってるだけだろぉ」
『……もはや女の子とさえ思われなかったりして』

んなこたぁねぇよ、断じて。同じ男だから分かるのか、むしろなんで名前は気づかねぇんだ。
名前のこの表情を見ているとオレには勝機が無いのだと嫌でも思い知らされる。
相手がXANXUSだから適わないのか。それとも名前がこんなにも恥ずかしそうに、なのに幸せそうな顔でXANXUSの話をするからなのか。

どんなに甘ったるい愛の台詞を囁いてもきっと名前はオレには気づかない。腕を掴んで、驚いたように振り返った名前の目だけを見てようやく名前はオレの存在に気がつく。

『スクアーロ、どうかした?』

どうかしただぁ?
笑わせんな、全部お前の事だ。オレはいつだってどうかしっぱなしだ。
そんな目で見るな、こっちを向くな。
なにも返せないオレは気持ちを押し殺すように、いつも通り「そのままで十分可愛い」と言った。こんな風に使いてぇ台詞じゃねぇのに。お前がオレだけを見てくれたときに始めて意味を成す言葉にしたいのに。

『なんで、だろう』
「あ゛?」
『スクアーロにそう言われると本当に大丈夫な気がしてくる。スクアーロの言葉って魔法みたいだね』

不思議、だね。
そう言ってはにかんだ名前はまた雪の道を歩き始める。

あぁ不思議だ、本当に。
期待させるようなこと言いやがって、なんてオレが1人で勝手に舞い上がっているだけだ。やっぱり諦めきれねぇじゃねぇか。
小さく自嘲するように笑ったスクアーロは名前の通った足跡を辿るようにゆっくりとまた歩き始めた。


Dimoio


[END]

dimoio…確か伊で雪解けだとか融解だとかだったような、違ったらすいません。ニュアンス自体が違う可能性も。

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