(りんごフラン) 『こらフランーお野菜食べないと大きくなれないよ』 「大丈夫ですってばー、10年後のミーはなかなかハンサムに成長してるって名前ネーサン自分で言ってたじゃないですかー。野菜のひとつやふたつくらい……」 『私には4つや5つあるように見えるけどなぁ』 「名前ネーサンのヘリクツー」 『いいから黙って食べなさい』 “でも本当なんでしょー?ミーったら10年後は犬ニーサンよりビックな青年になってるんですからー” うーん、確かに力はつけてたみたいだけど体に関してはそれはどうだったかしら。 そもそもそんなこと、フォークの持ち方もままならないちびっ子に言われたって知ったこっちゃない。 『じゃあこれを食べて立派になって。未来のフランは過去の私に感謝することね』 手つかずのまま残されたブロッコリーにごまドレッシングをかけてあげると、ぶうっとした顔のフランはようやく目の前の緑の処理に取り掛かり始めた。 「ねぇ名前ネーサン。なんで犬ニーサンは食べなくていいんですかー?そんなのズルイですよー」 『アレがまともな食事してるのなんて私見たことがないわ』 「ミーもそーしたいーですー」 『毎日麦チョコとフルーティーなガムだけで本当にいいなら、これからは犬に“ご飯”作ってもらったら?』 「……いじわる」 いじわる。鬼、鬼ばば。 ばか、ばかばかばか。 作ってくれた人に対してとは思えない暴言を浴びせられられて我慢していられるほど私も大人じゃない。 「名前ネーサン?」 『……』 「ねぇ名前ネーサンー、怒ったんですか?ねぇってばー」 『……』 「ミーちゃんとこれ食べて名前に見合う男になります」 『……』 「名前ネーサン無視しないでくださいよー。ミーがはずかしいじゃないですか」 『……もう』 「名前、ねぇさ……」 『そんなこと言うと明日もブロッコリー出しちゃうわよ!』 「え……え゛ーーーーーー」 いやですいやです! ケチ!腹黒ばかーーー!!! 再びフランの文句が降ってくる。そんなこと言ってる暇があれば口に詰め込んじゃえばいいのに。 このくそがきんちょどこで学んでくるんだか一丁前のことは言えるくせにまだまだ子供なんだから本当に困る。 『少なくともなぁ、ブロッコリーが食べれるまであのフランには会えないのかぁ……』 「むぐ、はべまひたー」 んっ、と空になった皿を傾けて私に向けるフラン。 そんな一生懸命な姿が可愛くて口元についたドレッシングを拭った後、ついぽんぽんとりんごの被り物を撫でた。 『フラン偉いね。偉い偉い』 「あ、名前ネーサンバカにしてるでしょー」 『してないしてない!それよりお皿持って来てくれる?』 「えー……ってじょうだんですってばー鬼ばばー」 『だーれが鬼ばばだって?』 「……ごめんなさいー」 夢で見たフランは、華奢な体つきな相変わらずだったけどびっくりするくらい大人になっていて、いつ頃抜かされたのか私はフランを見上げているだけだった。 そんなフランと私があの時間では付き合っていること……もしかしたらこれから私とフランが付き合うことになるかもしれない、だなんて、記憶を飛ばしてしまったこのちびっ子フランは知る由もない。 そんな日が本当に訪れるのか、訪れてほしいのかも今の私には全くわからない。 分からないけど…… 『(けど、もう暫くはこの関係でいても良いかもしれない、かな?)』 [END] ←戻る |