短編 2012〜 | ナノ
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 (りんごフラン)

あ、あーあ。
カッターンという不吉な音にいやぁな予感がして戻ってきてみればこのとおり。恐る恐る下を覗くと10m、20m離れた地面の上に使い物にならなくなった梯子が横になっていた。まったく、壁にかかっていない梯子なんてただの棒の組み合わせじゃないですかー。
さてどうしたものでしょう、ミーは下に降りられなくなってしまいました。あんなド田舎で比較的アクティブに暮らしていたミーも、流石にこんな高い場所から何もなしで飛び降りるのは少し無理がありそうです。ミーってほんとバカ。近くに木がないか探してみましたが無さそうみたいです、あーあ。
だってだって、ミーってまだ年齢が両手に収まり切るくらい子供なんですよ。なーんにもない屋上に1人、降りられるアテもないこんな状況なら泣いたっていいくらいですー。

本当はあと10時間後くらいにこうしてる予定だったのに、それも1人ではなく2人で。
ゴロンと寝転がると優しく照っている太陽が気持ちいい。爽やかな秋晴れ、どこまでも深い深い水色の空に吸い込まれそう。大きく息を吸い込めばしたに生えているオレンジの小さな花の香りで肺がいっぱいになる。少しこそばゆいけれどいい香り。もう少し経てば道はそのオレンジの花弁でいっぱいになるのだと名前が教えてくれた。
しかしそんな風にのんびりしていられたのもほんの30分程度。すぐに飽きてしまったミーは屋根の上にこの状況を助ける何かが落ちていないか散策を始めた。屋根の淵ももう一度確認。さっきよりも念入りに行ったが収穫はやっぱり0のまま。地面は普通の人ならアタマがくらっとするほど遠かったし、屋上の地面にはさっきミーが広げたブルーシートが広がっているだけだった。

これって極めて絶望的です。だって師匠やニーサン達は学校で夕方まで帰ってこないから。十中八九、犬ニーサンなんかはサボりなんでしょうけど。サボりなら早く帰ってくればいいのに。
名前ならきっと室内にいるはず。でも休みの日の名前が外に出てくるのは決まって夕方、買い出しに行く時だけだから望みはない。M.Mネーサンはトーキョーにお買い物。ヴェル公あたりが1番出現率が高いけど、彼にこんな姿を見せるわけにはいきません。鼻で笑われて、拳を握っているしかないなんて冗談じゃない、まーもしそんなことがあろうものならまたの機会に仕返ししてやりますがー。

「名前ー誰かー助けてくださいー…なんてー……」

広い広い屋根の上にぽつんと1人。体育座りなんかしちゃって、ミーまるで遭難者ですー。まぁ状況的にはかわらないんですけど。

だーれかー…ヘルプミー……。

「あーあ、あの白い人やボンゴレのボスみたいに空が飛べたらなー」

ぐぅっと寂しく鳴いたお腹を抑えながらまた空を見上げる。むしろ空しか見る場所がないんです、でもこの調子なら今夜はしっかり晴れそう。きっと流れ星も綺麗に見えることでしょうー。
空が飛べたら、きっと気持ちいいんだろうな。あ、そーだ、今度は名前と幻術で空を飛びましょう。
幻術があればなんでもできるんです。目先の私利私欲のためにこの力を使うこと、師匠はよく思わないかもしれないけどー……って師匠だって結局は自分のために使ってますもんね。力を持ったもん勝ちです。名前だって絶対喜んでくれます。絶対、絶対……その言葉を反芻し口元を緩ませる。名前を空に招待するんです、この力で。
そろそろ本格的に飽きてきた。うーんと黒いグローブのついた手を空にかざし伸びをしたところでミーは重大な過ちに気づいたんです。




『あっフランいたいた!お昼の時間すぎてもこないからてっきり外に出てたんだと……っわ』

会うなりいきなり飛びついたミーのせいで名前は一瞬重心をぐらつかせる。あまりにも突然で驚いてるはずなのに、名前はおそるおそる肩を抱き返してくれた。

『……怖い夢みた?』

ぶんぶん頭を振るミーの頭をくしゃっと撫でる。違うんです、それからホームシックでもないんです。あれくらい何も怖くなかったけど、この広い建物の中ですぐに名前の姿を見つけられて思わず体が動いたいたんです。
一気に言おうとしたけれど上手くまとめられなくて、仕方なくミーは名前の体に頭を押し付けた。

『せっかく美味しいクロワッサンとクリームパンと買ってきたのに、フランったらいないんだもん。もう少しで犬のおやつになるところだったよ』
「……犬ニーサンになんか渡してたまるもんですかー」
『大丈夫、ちゃんととって置いてあるから』

しばらく抱擁したままでいると、ふいに名前がすんすんと鼻をならす。

“太陽のにおいがする”

「どこにいたの?」不思議そうに問いかける名前にミーは得意げに「それは今夜まで秘密です」って答えた。



秋風に揺らぐ常夏のひまわり


『あったかいお紅茶も煎れてあげるからね』
「えー、ミー熱いの嫌いですー」

[END]

りんごフラン。りんごフランは意外と幼くてとても子供らしくて。
原作では出てくるたびににやにやしっぱなしだったので、そんな子供要素を詰め込んでみました。
たぶん9月かなんかに星か月が綺麗に見える日があって、その時に書いたお話。
アンケートでリクエストくださった方、ありがとうございました!

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