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吐き出された白い煙がキッチンの空気に溶ける。見えない毒だ。気づかないうちに体を蝕む怖いこわーい毒。料理人が煙草なんて言語道断だと思うんだけど、彼は彼の自慢の狂いのない舌にはちょっぴりスパイスが必要なんだと言う。
味覚を寸分狂わすことなく毎日美味しいご飯を用意してくれてるのは事実だからそう言われちゃぐうの音も出ないんだけど。

『そっか、スパイス』
「ん、何が?」
『スパイス論なら合点がいくと思って』

『サンジが私との関係に求めてるのはちょっとした非日常。毎日変わらない人間関係に退屈しちゃって手っ取り早くかき回すには恋愛沙汰はぴったりだもの』
「今更船旅に退屈なんてしたりしないよ。退屈する暇もなく海はオレ達に挑戦を仕掛けてくるしね」

ハハっと笑うサンジの口からまた毒が、ふわっと、吐き出される。

「ねぇ、キス、していいでしょ?」
『やだって言ったらしないの?』
「しないよ。オレは紳士だからね」
『それは否めないかも』
「名前ちゃんは勘違いしてるかもしれないけど冗談と見せかけた本気は本気じゃないの」
『勘違い男なのね』
「うん、相手によってはそうかもね」
『最低だね』
「でもオレだって相手は選ぶさ。だから……」

オレが本気になる時は、絶対本気なんだ。

私に向けた顔に白い歯がのぞく。
でも冗談の時が冗談だからって、本気の時はいつも本気だなんてテーゼは成り立たないよ。

『サンジに本気なんて似合わないよ』
「そう?なんだか心外だなぁ」

これ以上不安にさせるのはやめてよ。
私は貴方を繋ぎとめておく自信なんてこれっぽっちもないんだから。


駆け引きなんて苦手なくせに(、ね。)


[END]