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「エロ女」
『……うるさいわよバカ』

なんだってんだ。朝から部屋に押しかけてきたかと思ったら嶺二にちゅーされただ?しかも人生で始めてだった、だ?
しかも顔は始終緩みっぱなし。頬なんて抑えやがってなぁに妄想してんだこのエロ女。
テレビは点けてねぇはずなのに、ンなくだらねぇ臨時ニュースのせいでせっかくの朝飯が最悪だ。

「その手の話ならレンとでもしてりゃいいだろ。なんでおれんとこにくんだよ」
『だってぇ、前にレンくんとそんな話した時に、“名前さんはさ、良い意味で然るべき経験をしていそうだよね”って言われちゃったんだもん』
「だから」
『今更ちゅーも初めてなんて言えないじゃん』

馬鹿野郎か。
大方、この年になっても恋愛ほぼ未経験だったこいつのプライドを傷つけないように上手く言ったんだろう。あいつはもはや嫌味さえ感じない位、女の扱いが上手いんだ。それなのに真に受けやがって。

『あーあ、どうしよう』
「なにが」
『次に嶺二と顔合わせた時。意識しちゃってちゃんと話せないかもしれない』

「(大方そうなるだろうな)」
『キス如きで浮かれて気持ち悪い女って思われるかもしれない』
「(そりゃおれのセリフだっつの)」
『蘭丸だったら彼女との初チューのあとって意識しちゃう?』
「(そんなんするに決まってんだろ)」
『ちょっと!返事しなさいよ!』
「うぉっ」

突然名前が肩を引いたせいで、ばらばらと米が机にこぼれる。

「なにしやがる!もったいねーじゃねーか!」
『ねぇねぇ、蘭丸は好きな子とキスしたことある?』

おい、無視してんじゃねぇぞ。

「……」
『目の前にこの年で初キスに浮かれてる女がいるんだから答えるくらいいいじゃない。それともまさかまだしたことないとか……』
「だぁもう!あったらどうだってんだ。ったくうっせーな。あるけどよ……」
『けど?』
「そんなの昔の話で今は好きじゃねぇし、関係ねぇだろ」

顔色一つ変えない名前が憎い。
ふぅん、そういうものなのね。と呟いた名前は畳に座り込み、おれの話を聞き入る体制に入る。だが、これ以上おれは話すことなんてねぇ。

コツンと無防備なデコをはたいて食器を流しに片す。端に立てかけてあったベースケースに手を伸ばせばもうおれの1日が始まる。

「ともかく嶺二は、んなくだらねーこと気にする奴じゃねぇだろ。それに初めてだったなんて知ろうものなら浮かれて踊り出すぜ」
『そっ、そうかな』
「あー自分で言っててうぜぇ」
『え?』
「だから、なにも心配するこたねーって言ってんだよ。タラタラしてっと閉じ込めんぞ」
『あっごめん。蘭丸今日仕事だったのね』

ドアを開けると東の空に上がりかけた日の光に目が眩んだ。
後ろではぱたぱたと靴を引っ掛ける慌ただしい音がして何か錯覚してしまいそうだった。

『蘭丸ありがと』
「あぁ」
『なんでだろ、昔から蘭丸に話すとなんでもすっきりしゃうのよね』
「毎度毎度付き合ってやってる立場にもなってみろよ」
『うん!だから蘭丸も何かあったら言ってね。私じゃ頼りないかもしれないんだけど、親身に相談には乗れるからさ』
「話せるモンなら話してる」
『……大丈夫だよ』

“蘭丸にも素敵な人が、絶対に現れるから”。


[END]

リアリナ ー私の恋を知ってください