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- ナノ -

『ねぇねぇ要、たまご好き?』
「…好きだけど」

じわじわと、でも確実に照りつけてくる太陽。町に溢れる春の香り、それから時折肌寒さも感じる風。
いつものように学校が終わり並んで歩いていると唐突に名前がそんな質問をしてきた。
明日のお弁当には卵焼きが入るのだろうか?いや違うな、何故なら名前の作ってくれるお弁当にはいつも卵焼きが入っているからだ。空色の弁当箱の端の方にちょこんと遠慮がちに。
売り物のように形は整ってないし、むしろ少し不恰好ではあるけどなんともいい甘さで美味しいのだ。

「名前は?」
『へっ、たったまご?好きだよ、好き好き!』
「……お前なんか隠してんだろ」

開いていた名前の口がそのまま閉じられることなく開きっぱなしになる。それから目線がうようよとさ迷い返された一言。

"かっ隠してないもん!"

じゃあなんでどもってんだよ。目も合わせようとしねぇし明らかに挙動不審、隠したいことがあるなら上手く隠せばいいのに。
なんでこう俺の周りにいるやつらは揃いも揃ってこんなに隠し事が下手なんだ。下手なくせに隠し事をしたがる。
名前の考えてることだ。きっと大したことじゃない、もしくは俺へのサプライズ。

相手が小ザルや祐希であれば無理矢理にでも問い詰めていっぱつ殴ってやるところだが可愛い彼女となれば話は別。どんなに抜けたことを考えていてもそれが可愛くて可愛くて仕方ないのだ。
隣でもじもじと小さくなっている名前の手を取ると、それがきっかけになって名前との距離が数センチ近づいた。
初めは手さえも繋ぐのに躊躇したんだったな。今だって緊張はするがそれでも自然に出来るようになった方だ。

『あっあのさ、白身…と白身と黄身は!』
「はぁ?」
『どっちが……好き、ですか』
「いや一緒に食うだろ」
『あ、うん。そうだよね…』

どうした、しゅんとなる名前の顔を覗き込むとぷいっとそっぽを向かれてしまった。俺よりも恥ずかしがりなのだ。だから俺はこんなに余裕でいられるのかもしれない。こうして少しからかってやろうと思えるくらいに。

あっという間に着いた名前の家の前。
開かれたピンク色のカーテンからぬいぐるみが顔を覗かせている。部屋には入ったことはないがこれだけでも名前の部屋がどんな雰囲気なのか簡単に想像がつく。

『お母さん、今日いるから……』
「分かった」

ぽんぽんと頭を撫でるとちょっと照れたように目元が緩む。

「ちゃんと早く寝ろよ」
『うん』
「夕飯も、食欲無くなってきたからって抜くな」
『ちゃんと食べる』
「分かんねぇ問題あったら遠慮せずに電話しろよ、ちゃんと聞くから」
『ふふ、はーい。要パパみたいだね』

いやいや、そこは思っても彼氏って言えよ!
彼女にお父さんみたい(しかもパパ)なんて言われて我慢できる高校生なんてそんなに多くねぇ筈だぞ。
放っておけばそそっかしくて見ていられないような少女だからだろうか。父親と言われて上手く反応できるほどではないが、なぜかそれでもいいと思ってしまうのだ。
良かろうが悪かろうが否定はするのだけど。

「俺は…名前ちゃんの彼氏、なんですが」
『そんなの分かってるよ!私だって要の彼女だもん』
「……まっまぁいいよ。また名前の家に邪魔することになっても悪いからな、また明日」
『うん、要ありがとう。また明日ね』
「あ、っとそうだ……名前」

「俺はキミが好き」

(ってなんでこんなくだらねーことに付き合ってんだよ俺…っ)
(まぁ……いいか)


[END]

私の友達に君が好きっていう告白に白身が好きと返した強者がいましたっけ(実話)。
年上好きな要さんだけど同学年、もしくはひとつ下の子と付き合っているのもいいなぁって。