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「お前が嫌いだ」

言葉を補えば、お前のそういうところが気に食わない。

少し動揺させたかったのかもしれない。
でも志摩は一瞬きょとんとした顔をしただけだった。予想に反して…いや予想通り、だ。
すぐに困ったような笑顔を作った志摩は「冗談やめてやー」なんて言ってオレの肩に手を置いた。その手を払いのけると今度は少し、ほんの一瞬だけ驚いた顔をした。動揺させたかった――そんな理由はもちろんあったがオレが半分本心で言っていることにあいつは気づいているはずだ。
否、気づいていないわけがない。

「奥村くん嫌やわー、さすがに傷つくで」
「じゃあ傷ついた顔しろよ」
「傷ついた顔が見たいって奥村くんドSやったん?でも残念、オレMやないんでそういうのは坊にでも……」
「だから、そういうところ嫌だ」
「嫌や言われてもなぁ…」

志摩の考えてることなんて顔を見ていればなんだって分かる。ほら、今志摩はオレのこと呆れてる。いきなり何言い出すんだって。
志摩は自分の感情を表に出すことができないわけではない。そこがたちが悪いんだ。「隠すのに…自分の感情を誰にも言わずにしまいこむのにたまに顔に出てるんだよ、誰も気づいてないと思ってんだろうけどオレはずっと見てんだ」
「……」
「嫌なことがあるなら嫌って言ってくれよ、それならまだ…ろ…っその方がましだ!」
「露骨そうに?」
「っ、とにかくオレはお前のそういうところ嫌いだ!」

言いきった。心がチクリと痛んだ。痛かったけどそれ以上に言わずにはいられなかった。

「そんなことゆうたらあかんで。奥村くん、気づいてる?奥村くん、本当はこんなこと言いたくないって顔したはるの」
「お前が言わせたんだ」
「奥村くんに人を傷つけるような台詞は似合いません」

ならさっきなんでそんな顔していたんだ。
ふと目を離した隙に見せたあの顔は一体なんだったんだ。
納得がいかない、そんな気持ちでいっぱいで酷いしかめっ面をしていたのだろう。

「奥村くん、そんな顔せんで」
「それオレがお前に…っ」
「……嫌いなんて、言わんで」

なっ、そっと手を重ねて志摩が困ったように笑う。

志摩にこんな顔をさせたのは誰だ?
そんな顔をさせたいんじゃないのに。頼ってくれないことへの苛立ちを一方的に押し付けていただけじゃないか。
そんなオレのことを分かって尚、志摩はオレに反論も怒りも辛いこともなにも返さず笑い返してくれて。自分よりも図体のでかい目の前にいる恋人が急に愛おしくなって。そっと頭を撫でたらくすぐったそうに身をよじった。

「さっき、手払ってごめんな」
「えぇですよ、俺も…奥村くんに辛い顔させてごめん」
「それから嫌いっていうのもごめん」
「俺が奥村くんに心配かけているのが悪いんです。それにこうやって心配してくれてるのが心地いいなんてそんなこと思ってしまうんですよ」

だから嫌いって言われて寂しかったけど、少し嬉しかったんやで。


はじめて志摩が一人でいるのを見たとき、なんだか寂しそうなやつだと思った。
それから自分にどこか似ている、とも。
危なっかしくて放っておけなかった。

まだ時間はかかるかもしれないけれど。
オレが踏み込んでいけばきっと志摩はオレに心を許してくれるはずだから……

投げたらかえして

「次つまんねーウソの顔見せたらお弁当作ってきてやんねぇぞ」
「奥村くんは俺のことずっと見てくれてはるみたいやし気ぃ抜けんな、全く敵わんわー」
「なっ……」
「(フフ、赤くなって…)」
「…っそんなん当たり前だろ!これからだってずっと見続けてやるんだから覚悟しろよな」


[END]

最後は廉造くんが顔真っ赤のきゅん、ですよね!
うふふ、燐廉は将来有望幸せのカップリング。

「投げたらかえして」というタイトルはお借り物です、愛してるぜベイベの番外編から。このタイトル大好きなんです!
亜希ちゃんのお話、亜希ちゃん可愛いですよね。