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さて、どうしたものか。
目の前で嗚咽を漏らす最愛の少女になんと声をかければ良いのやら。

「泣くなよ」、いや違う、もっと気の効いた言葉はないのか?
「元気出せよな」、別に元気がないわけじゃない。

ならなんて言えばいいんだ?
黙って頭を撫でればいいのだろうか。それともハグしてやれば…いやいやいや、そもそも俺が勝手に触れてもいいものなのか。

そうだ、レンだったらどうするだろう。女の扱いになれているレンなら目の前で泣いている女の子への対応もスマートにこなして見せるだろう。レンだったら…そうか、おでこにキスをすれば……まて、冷静になれ俺。普通にそれは違うだろ。
なにかしてあげなければという変な使命感が働き、気づけば俺の右手は春歌の肩に置かれ静かに撫で付けていた。
う…っうわぁあっ……喉まで出かかった情けない声を飲み込む。
普段から触れることはあるのになんでこんな緊張すんだ。思わず一歩、二歩も三歩も遠退きそうになったが一度触れてしまったからには離すわけにもいかない。でもこのまま触れていてもいいのか、春歌は嫌じゃないだろうか。それにしてもなんて華奢なんだろう。身長は…確かにあまり変わらないかもしれないけど肩幅も違えば触れ方に戸惑うほどにやわらかい。

「大丈夫、か?」

しばらくして呼吸が整ってきたところでそっと声をかける。なににびびってんだか、さっきから情けねぇ。声震えてんじゃん俺。
でもそんな俺にも負けないような消え入りそうな声で春歌から「はい」と返事が返ってきて少し安心した。

「翔くんの手…あったかいです。あの時も、こうやって慰めてもらったから私元気が出て……」

今度はしっかりと、でも透き通ってもし形があるのであればすぐに崩れてしまいそうな声が俺の耳に届く。
あぁ、そんなこともあった。そんなこともあったなんて遠回しな言い方をする必要もない、あれは忘れもしない入学したての最初の週のことだった。
こうして同じように恐る恐る春歌の肩に手を回したんだっけ。泣いてる女の子の慰めかたを知らなかった俺は小さい時に薫にやってあげたようにポンポンとゆっくり叩いてあげることしかできなくて……

「でもあのときとは違うんです」

やっと、顔を上げてくれた。
柔らかく微笑む春歌を見て自分の頬が緩まるのを感じた。ぶらぶらと放り出されていた左手が小さな温かい手に包み込まれる。

「なぁ…キス、してもいい?」
「…はい」

翔くん耳まで真っ赤です……なーんて、なんでお前こそそんな余裕そうな顔で笑ってるんだよ。心臓バクバク言ってる俺がおかしいみたいじゃん。
悔しかったから予定変更。唇には向かわず、代わりにおでこに軽く触れさせた。余裕を見せるためにって派手にリップ音をたててみたら予想以上に大きい音が出て思わず動揺しそうになっちまった。
顔を離して向き合うと目の前で顔を赤くさせているその女の子が俺のものなんだって、改めてそう実感させられて、堪らなくなって思いきり抱き締めた。思いきりだけど壊れないようにそっと。

「今日限り。もうお前のこと、泣かせたりしないから」


(好きって言ってもらえて嬉しかった)
(翔くん、私も翔くんが大好きです)


[END]

春ちゃんはキスされたあとに顔が赤くなるタイプ。