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最近の真斗くんのマイブームは私を抱きしめることです。

おはようのハグやおやすみのハグはもちろん。行ってきます、と去り際にハグ。帰ってきてもただいまのハグ。
私のお料理中もハグ。お行儀のいい真斗くんだから食事中は一旦離れるけど、ご馳走様をしたらまたすぐにハグ。

私は、きっと真斗くんは疲れているんだろう、と思った。疲れているから彼女で栄養補給。元気をチャージした真斗くんは明日からもより一層元気に仕事をして、私はまた麗しい真斗くんをテレビで拝むことができる、って幸せスパイラル。こんな私でも少しでも真斗くんのためになるのなら何も言わずにただ抱かれていようと思った。なーんて、いい彼女ぶったことを言ったけど私は真斗くんに抱きしめられるのが好きだ。だいすき。無理矢理じゃなく始めはそっと、私の様子を気にしてくれながら締めすぎず緩めすぎず。温かい真斗くんの胸を感じると思わず頭を預けざるを得ない。

っと、それはおいておいて。
真斗くんが疲れているのかもしれないと思った私は、私がお料理当番の時には出来るだけ体に良さそうなメニューにしてみたり(っていっても真斗くん普段からいいものばっかり食べてるから力になれてるのか分からないんだけど)、真斗くんの帰って来るタイミングを見計らってお風呂を沸かしたり。寝室にはリラックスできるお香を焚いてみたり。真斗くんの顔色を伺って過ごすこと2週間。どうやら真斗くんは特別疲れているわけではなさそうだということが分かった。

じゃあ真斗くんはいったいどうしてこんなに抱きつき魔になってしまったんだ?

「しかし、こうしているとお互いの体温が一緒になるようで気持ちがいいな」
『真斗くん、一体どうしちゃったの』

それを聞いたらきっと真斗くんは困ってしまうだろう。そう思って黙っていたのに、我慢が出来ずうっかり言葉が溢れてしまった。
なんで最近私のこと抱きしめてくれるの?嬉しいけど、なんでなのかとても気になるよ。真斗くんが疲れているのかなとか、一緒にいるだけじゃ足りなくなっちゃったのかなとか。
不安げな私を見て真斗くんが慌てる。神宮寺が……黒崎先輩が…、と手を口元に当てながら言い訳を始めた。違うのに、私は真斗くんを困らせたいわけじゃないのに。
真斗くんがそっぽを向くことで、露わになった首筋が、普段は真っ白なのに真っ赤に色づいているのがとても可愛い。じゃなくて。
あまりに私が不安げな顔をしていたせいか、真斗くんは説明するから聞いてくれ、と私を一旦床に降ろした。



「やぁ聖川。最近忙しいようだけどちゃんと名前ちゃんには構ってあげてるのか」
「気安く名前ちゃんなどと呼んではほしくないがな。心配されなくとも名前とは良い関係を保てている」
「下世話な話だけどちゃんと抱いてあげてるんだろうな」
「最近忙しいからあまりだな。しかしやたらめったらお前のようには触れてはいない」
「名前ちゃんはそれで満足してるのかな」
「貴様には関係のないことだ」
「……まあおれが言うのもなんだが抱いてやれよ」
「蘭ちゃん聞いてたんだ」
「うるせっ。ただ、真斗と名前のことは……なんつーか気になる。つか気にする」
「黒崎先輩がおっしゃるならば。心掛けてみます!」



ということがあったのだ。と、真斗くんが話終わったところで私は思わず拍手をしてしまう。だって真斗くん演技力があるから、いちいちセリフがレンくんや蘭ちゃん先輩にそっくりなんだもの。
とまぁそれはおいといて、レンくんや蘭ちゃん先輩が言っていた“抱く”って多分そういう意味じゃないと思うよ、真斗くん。
真斗くんと行為をしたことがないわけじゃないし、もう付き合いは長いけれどちゃんとシてる。だから大丈夫だよ、二人共。
それでも、2人のいう意味をそのまま抱きしめる、で受け取っちゃうなんて、真斗くんは本当に純粋なんだなぁ。まさか年上の同期や先輩にそんな話されると思ってないんだろうなぁ、真斗くん。

ふふふ、と1人であれこれ思っていたら、真斗くんがまたぎゅっと抱きしめてくれた。照れ屋で誠実な真斗くんだけど、こうしていると真斗くんの気持ちがいつも以上に伝わってくる。それに真斗くんも幸せなんだろうな、というのが目一杯分かって私も嬉しい。

だから名前はこれだけで十分幸せです。
レンくんや蘭ちゃん先輩にも今度教えてあげよう。


[END]