memo
 200804 ユ○バいこや

「なぁユ○バ行こや」
誰が言ったんか思いつきみたいな
発言が発端やった。
ええよ、ほないつ行く、て
ポンポン話が進んでって気が付けば
当日なわけやけど――――

「簓 お前はなんちゅうカッコしとんねん」
「ん?」
なんや?と言わんばかりに糸目を向けてくる
緑頭のこの男は白膠木簓、俺の友人
かつ今をときめく人気お笑い芸人や。
なのに、こいつときたら…!!!

「なんで変装してへんねん!!」
俺はずずずとあいつの方に詰め寄って
話し続ける。
「お前見つかったらやばいって
分かってるよなぁ?!それともなんや、
人気モンやからってキャーキャー言われてんの
見せつけたいんか?!あぁ?!」
これは若干の僻みである。
俺はお世辞にもモテるとは…言えへんからな。
やめよ 言ってて虚しい。

とにもかくにも俺の話を聞いた簓は
えーといいながら扇子で耳を塞ぐような
仕草をしながら口を開いた。
「寝坊してもうて着の身着のままで
きてもうたんや そんな怒りさんな」
「別に怒ってへんわ
ちゅーか着の身着のままはもったやろ
コーデ完璧やん」
簓の頭からつま先まで視線をやると
そのへんの服をぱっと取ってきたようには
とてもじゃないけどみえへんし、
まさかこんな洒落た服着て寝てるとも
思われへん。やから話盛っとんねんこいつは。

「着の身着のままは嘘にしてもまぁ、
寝坊したっちゅーんはほんまやで。
いや〜ユ○バとか久々すぎて
寝られへんかってなぁ」
「小学生か!!遠足前の小学生か!?」
「なぁそんなことゆーてんと
はよゲート前行かへんか?
盧笙もうついとるゆーとったし」
簓の言葉にそらそやな、とハッとして
せやけどここは譲れんと奴の肩をつかむ。

「簓 ちょっと待て。
駅前のコンビニ行くで」
「は?なんでや」
「マスク買うねん ほんで入ったら
テキトーなとこでサングラスでも眼鏡でも
何でも買え ええな?!」
こいつが見つかったら人だかりできるの
確定やもん そんな事があってたまるか。
アトラクションろくに行かれへんなってまう。
簓への人混みに巻き込まれるのもごめんや。

とりあえず盧笙にはちょっとおそなる
って連絡しとかなやな。
手早くラインで打ち込んで送信する。
既読はすぐについた。OKの返事に安堵する。

「よっしゃ、盧笙の了解も得たことやし
コンビニに―――って簓、」
ちょーっと目を離したすきに
いつの間にか奴の周辺にはひそひそ話をする
女の子達が集まって来ていることに気が付いた。

(うそやん もう気付かれとんかあいつ…!!)
まぁ緑頭なんて目立つもんな、
ってちゃうちゃう あかんでそんなん
俺の悠々自適なユニバプランが初っ端で
崩壊してしまうことなんて認めへん…!!

集まりだした人混みから簓を救出すべく
素早く近寄って腕を掴むと
ずかずかとコンビニまで向かっていく。
「おうおう 恭は強引やなぁ」
「なんか気持ち悪い言い方やめぇ」
「旦那がつれへんくてこまるわぁ」
「誰が旦那じゃ!
夫婦漫才ちゃうねんぞ」

そんなやり取りをしていたばかりに
無駄に視線を集めてしまっていた事には
しばらく気付かへんかった。
(ほんまアホか俺)

そしてコンビニの長蛇のレジ列に
並んで あぁ、ゲートが遠い まだ遠いと
少し悲しくなるのだった。










オチはない

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