memo
 1203アホやなんやゆうたって

『簓のアホッ!!
二度とあいたないわッ!!』

そうやって捨て台詞吐いて
彼氏から逃げたんは後悔してへんかった。
全部あいつが悪いんや
そう言い聞かせながら何度もあの日の
思い出を遡る。

白膠木簓。

俺が初めて愛した人。
初めて好きになった芸人の卵。やった。
今はバリバリ人気の若手芸人
どんなキセキか知らんけど 俺とあいつは
偶然にも友達で 夢を追いかけるあいつを
どうしてか好きになってもうて
告って OKもろて、そんで、
気が付いたら『二度とあいたない』って
自分から振った。だって、あいつ、急に
上京するとかいいよった。
普通は付き合っとる俺に相談とか
話ししてくれてもよかったんちゃうん
そう思うのに、何もなかった。
なんでも話せる仲やおもっとったんは
俺の気のせいで 簓にとって俺は
大阪に置いていく、要らんもんなんちゃうかて
そう思えてならなかった。

別れ話は初めての喧嘩にして
最後の喧嘩になった。
まぁ、別れ話てゆーほど、はなしこんでも
ないねんけどな。

『恭なんで話聞いてくれへんねん』
『聞くも何も話さへんかったの
自分ちゃうんけ ほんま、なんやねんお前』

…今思ったら、別に あんな怒らんでも
よかったのかもしれんな。

『お前が大阪好きな事も
地元からできるだけ離れたないことも
知ってて普通に言えるわけ無いやろ、
俺は恭がいたい場所に
おってほしいねん。無理に上京させたない』

…簓は ちゃんと俺の事考えてくれてた。
やのに。

意固地になって 素直になれなくなって
引っ込みつかなくて 突き放して。

今もじくじく、胸が痛い。
振ったのは自分のくせに。傷付いた顔をする
こんな自分がたまらなく嫌でしゃあないよ。

(…簓、ごめんな

ずっと 好きやで)

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