memo | ナノ
 0917 ヤクザに拾われた日

両親に捨てられたのは
5つの時。
闇金に手を出して
返済ができなくなった両親は
なんの迷いもなく僕を差し出した。
『この子を売りますから
勘弁して下さい』
そう言われたことは鼓膜の奥に
焼き付いて 数年たった今も
離れないでいる。

売られた僕は慰みものに
なるのだと知らされた。
てっきり臓器売買でもされるの
たと思っていたら違うらしい。
『男でも穴はあるからな』
下品に笑いながら言った男は
僕が10になる頃に ソレをはじめた。

身体を弄り 射精を覚えさせられた
男を喜ばす事を覚えさせられた
女を喜ばす事も教えこまれた
それからは代わる代わる
知らない人を抱いて抱かれた。

生きる気力もなく
ただ性処理として生きる僕は
ある日街なかで赤い瞳に出会った

狭く暗い路地裏で
人がボコボコにされているのを見つけて
゛しねるんじゃないか゛
そんな思いが頭をよぎって
自ら危険へと飛び込んだ。
つもりだった。

バタバタ足下に倒れている
男達を避けながら 奥へと進んでいく
するとそこにいたのは返り血を
浴びた白色で、その背中が
こちらを振り返る。

「ガキがんなとこで
何やってやがる」
地を這うような低い声。
目は赤くて まるで血のようだ
と思ってしまったけれど
怖くは無かった。

「僕を 殺してくれませんか」

なんの迷いもなくでた言葉に
赤い目は訝しげに細められる
「自分が何言ってるかわかってんのか」
コクリと頷く。
「僕は性処理の為だけに
生かされています
小さい頃 ヤクザに売られたんです
それからずっと
生きてるのか死んでるのかわかりません」
感情なんてものは随分前に
死んでしまった気がする。
嬉しいも悲しいもない。
ただただ与えられた仕事を
なしていくだけのロボットにすぎない

ゆっくり白色に近付いて
そっと手を伸ばす。
払われるかと思っていたけれど
何も言われなかった。

シャツを引っ張って催促をする
「僕の、息の根をとめてくれませんか」
「…そういう趣味はねぇ」
「お兄さんなら
簡単にできるでしょう」
「そんな風にみえんのか」
黙って頷く。
返り血にまみれた姿をみると
僕一人をどうこうするくらい
造作もないことだろう。

「ガキがなまいってんじゃねぇ
さっきも言ったが俺様にんな趣味は
ねぇんだ とっとと帰んな」
「…帰っても ロボットみたいに
生きるだけなんです」

゛助けて゛

喉から出かけた声を押し殺して俯く。
感情 死んだと思っていたのに
僕は 助かりたかったのか、
初めて気づいた事実に身体が
震え始める。
たまらずにそのまましゃがみこんだ。

赤色が僕を見下ろして
何を思っていたのかは分からない。
けれど その人が僕の手を
引いて歩き始めるまで
そう時間はかからなかった。

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