▼ 0828ハッピーバースデー
7月26日。今日は山田家にとって
何よりも大切な日だった。
一番上のお兄ちゃんの誕生日。
みんなで散々騒いだあとは
リビングで雑魚寝になっちゃったりして。
でも そんな中 お兄ちゃんが
起き上がって 自室に帰るのを、
僕は見たんだ。
そっと
そぉっと足音を立てないように
赤い背中を追いかけていく。
お兄ちゃんのお部屋の前につくと
コンコン、と控えめにノックをしてみせる。
「お兄ちゃん 入ってもいいですか」
「恭?起きてたのか」
少し驚いた声が返ってきつつ
構わねえぞ、とOKを貰えたことに
ホッとする。
「失礼します」そう言って
お部屋の中へ入ると どうやら
お兄ちゃんは僕達からのプレゼントを
眺めているようだった。
その様子をドキドキしながらみつめて
そっと口を開く。
「あの、お兄ちゃん
実は さっき渡しそびれちゃった
プレゼントがあるんです」
「そうなのか?」
不思議そうにこちらを振り返る姿に
たまらなくなって駆け寄り
大きな背中へ抱き着く。
「恭?」
「…お兄ちゃん 僕のこと
貰ってください」
「は?おまえ何言って」
「冗談なんかじゃ
ないんだよ…ッ!!一郎お兄ちゃん…
ずっと ずっとずっと
好きだったんだ だからっ…
ぼくを、たべて…?」
縁を切られる覚悟で言った言葉と
訪れた沈黙に 僕の胸は
張り裂けそうだった。
一郎お兄ちゃん
例え許してもらえなくても
拒絶されても 僕は、貴方のことが―――
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