memo | ナノ
 0826 失恋した日

じわり じわり
堪えきれなくなった大粒の涙が
とめどなく溢れて 地面に
跡を残していく。

「…泣くなよ」
そう言いながら
側に居てくれる 山田三郎くん――は、
唯一僕が゛秘密゛を打ち明けた
友達だった。

「ごめ…ごめっ、ん」
涙を堪えようと上を向いてみたり
ゴシゴシ目を擦って みても
次から次へと溢れて
なかなか止まらない。

「…だからやめろっていったんだ
恭、どうして二郎なんか
好きになったんだよ」

゛二郎゛―――その名前に
胸を締め付けられる。
二郎。二郎さん。
それは三郎くんのお兄さんの名前で
僕が たった今失恋した人の名前だ。

好きになったのはずっと前
困っている所を助けてもらったのが
始まりで。その頃は三郎くんとすら
面識も無くて。萬屋さんだと知って、
お客さんとして行くようになってから
知り合ったんだ。

年が同じということや
僕にはない、落ち着きのある三郎くんは
一緒にいてとてもホッとする存在で。
流れで二郎さんとも、仲良くしてもらって。

人としてじゃなくて 恋愛として
好きなんだと自覚してしまった時は
一人で大パニックで。
事もあろうに、実の弟である
三郎くんに相談してしまったんだ。

「さぶ、ろうくん…僕…
僕……どうしよう」
「顔色悪いな
体調不良?それなら早く家に、」
「ち、ちがうっ!違う んだ……
好きな人ができたんだ、でも」


男の人で

三郎くんの お兄さんだった。



――――

――――――――



直接告白したわけじゃない
だけど 見てしまった。
女の人と、一緒にいる所。
それだけで僕は 駄目だと
思ってしまった。

初めから わかってたことなのに
自分が男で 越えられない壁があることに
また気付いてしまったんだ。


「…恭
僕じゃダメなのかよ」

そう隣で呟かれた声に
気付く事はなく。

三郎くんは
僕の涙が止まるまで
そばにいてくれた

prev / next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -