memo
 0709 かえりみち

帰り道 あいつと俺の家は反対方向。
別れ道でばいばいするのが
いつものことで

遠く離れてから 振り返って
おっきな声であいつの名前を呼ぶ

「三郎ーーー!!!」

びくっと体を揺らして
嫌そうながらに振り向いた三郎。
言いそうなことは大体想像がつく。

大方、

「やめろよ恥ずかしい」とか
そんなところだろう。

でもこっから先言う事は
なんて返ってくるのか未知数だ。

黙って見つめる俺に
痺れを切らしたのか
イラついた様子で三郎が
こっちへやって来る。


「なんなんだよお前!
人の事呼んどいて黙りとか
気持ち悪、」
話し続ける三郎の声を遮る。
「なぁ 三郎」
真面目なトーンで言うと
何かを察知したのか
口をキュと結んで ムッとした
様子で口を開く。
「………何、」



拝啓 幼馴染の三郎くん

どうか笑わないで 聞いてほしい


「俺がお前のこと 好きって言ったら
どうする?」―――――

普段の茶化し要素なんて無くて
真剣に話す俺に 綺麗なオッドアイが
見開かれる

「どういう意味だよ」
「そのままの意味」

振り払われるか、そう思いながら
あいつの手を握って 口を開く

「俺は三郎と
ちゅーとかえっちとか、
全部したいってこと」
「………は、はぁああ?!?!」

顔を赤くしたり青くしたり
驚いたり困っていたり
クールな三郎には珍しく
コロコロと表情が変わっていく
…意外にも手は繋いだままだ、
もしかしたら ビックリしすぎて
手どころじゃないのかもな。

自分からパッと手を離して
未だに面食らってるらしい三郎に
言葉をかける。

「言いたかったのはそれだけだ
じゃあ、また明日な!」

うまく笑えてたか自信は無い。
言うだけ言って その場から逃げる様に
駆け足で帰っていく。

「あっ、おい恭!!」
なんて呼ぶ声も聞こえたけれど。
振り返る勇気は、なかった

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