memo | ナノ
 0418 おはようからはじまる

今日も今日とて毎朝恒例のラジオをつける
聞こえてくるのは三人の男の声
そのうち一人の声を聞いて
自然と頬が緩むのがわかる。
同時に寂しくなる気持ちも感じていた。

「今日のお題は好きな人が
できたらどうするか!」
そう言い放たれた言葉にドキッとする。

「いち兄は好きな人とか居るんですか?」
「オイ三郎 お前率直すぎんだろ!」
「二郎には聞いてないね!」
ワイワイと展開さていく会話に
いたたまれなくなってきて
ボリュームを少し落とす。

いち兄と呼ばれているそいつは、
そいつこそ 俺の――――


不意にポケットのスマホが振動する
慌てて取り出すとそこには 今まさに
考えていた奴からのラインが一件。

一郎
おはよう。
恭 ラジオ聞いてっか?

聞いてるよ、と打ち込み
送信を押す。というか今本番中じゃ
ないのか?不安になってそれも付け足しで
送信をすると すぐに既読になる。

そして 着信を知らせる画面へと切り替わった
相手は今ラジオをやっているであろう、
山田一郎本人からだ。

(何考えてんだよ一郎…!)

無視する事もできずに
通話ボタンを押すと おはよう、
と声がきこえる。

「おはよう、っていや!
今お前 本番中じゃないのかよ…?!
これって生放送だったよな…?!」
放送に入り込んでは悪いと
できうる限り声を潜めて話す。

ぷ、と吹き出した声が聞こえたかと思うと
「そんなに気使わなくてもかまわねえよ」
なんて笑いながらに話される

「いや、気ぃつかうだろ?!」
「今日は収録版なんだよ。
だから大丈夫だ」
「それを先に言えよっ!!」
俺の気遣いを返せ!

「そんなことより恭
今聞いてるんだよな?」
「え、あぁ うん。聞いてるよ」
ボリュームはさげちゃったけど。
だって こいつの恋愛話なんか
聞きたくないだろ。

…俺の話は
俺だけにしてくれればいいのに
そう思ってしまう ただの嫉妬心だけどさ。

「それじゃあ最後までちゃんと
聞いとけよな」
「?うん、聞くけど
急になんで?」
「まぁそのうちわかる。じゃあな」
「あっ!一郎?!」
ツー、ツー、と通話の終了を
知らせる音が響いて
釈然としない気持ちを抱えながらも
ラジオの音量をもとに戻す。

聞こえてくるのは相変わらず
一郎の恋話だ。

好きなひとができたら
どうなってしまうか どういう風に
告白するか そんな話が広げられている。

―――告白の仕方か
確かこいつは 好きだ、付き合ってくれって
そんなシンプルなものだったような気がする。

付き合いたての頃を懐かしく思いながら
聞き耳を立てていると 突然
今までおちゃらけていた声が真面目になって

「好きになった奴は一生大切にする
二人で一緒に幸せになろうぜ」

なんて とんでもなくキザな台詞が
耳へと飛び込んでくる。
それは リスナーに答えているというよりかは
まるで 特定の相手に向けられた言葉
そのもので。

再びスマホが振動する。


一郎
聞いてくれたか?



聞いた なにあれ


一郎
プロポーズ





「………………は、はぁ?!?!」


ディビ放送でプロポーズする奴が
あるかよバーカ!!!!バカ!!!
絶句する俺をよそに再びラインが
送られてくる。


一郎
今から恭のとこにいく。
返事はその時聞かせてくれ



い、今からってお前…!!

急に恥ずかしくなって顔がポッと
熱くなっていく。ふざけんなよマジで。

おはようから始まった
何気ない1日が ひどく幸せな1日へと
変わる予感がした。

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