男主SS
 ぼくのゆめは、@

戦争孤児。意味はわからなかったけど、僕はそういうものらしい。お母さん、お父さん、居たような気がするけれど 気が付いたらひとりぼっちで 生きていく為のお金を集めながら過ごしていた。
「恭 次はいつ来られるんだ」
筋肉質な上半身を晒したおじさんが 僕のお尻を撫でながら言った。僕はといえばおじさんの膝の上に乗って、腰を揺らしながら答える。
「いつでも大丈夫だよ」
――――身体を触らせるだけで お金が貰える。いつか教えてもらったお金の貰い方だった。生きて行く方法は、これしか知らない。

おじさんとバイバイしたら貰ったばかりのお金をポケットに突っ込んでお家へと帰っていく。帰るのは決まって夜だ、シブヤのキラキラ光る街並みを横目に 路地裏へと向かっていく。輝く街並みとは裏腹に、誰も居ないようなひっそりとした場所に僕の住処はあった。
暗くて狭くて 本当に誰も居ない そんな場所なんだ。なのに 今日は、狭苦しい壁の間に 寝そべっている人影が見えた。
少しだけ吃驚して瞬きをした後に人影に近寄ってじっくりと眺める。人影はピクリともしなかった。
「死体……?」
思わず呟くと もぞと人影が動いて よろよろと起き上がった。閉じられていた目がゆっくり開いて僕の目を見つめる。
「勝手に人を殺すんじゃねーよ。まだ生きてる」
「わ、しゃべった」
「生きてるから喋るに決まってんだろ。つーかなんでお前みたいなガキがこんなところに居るんだ?」
「おうち、ここにあるから」
「此処にィ…?まぁそれぞれ事情はあるよな。ところでお前 食いもん持ってねぇか」
「え、」
「腹が減って動けねぇんだよ…勿論、この礼はする、頼む 何か食べもん持ってきてくれねぇか この通りだ!」
めの前の人が勢い良く地面に両手をついて頭を下げていた。よっぽどお腹が空いているらしい。
僕はお金を入れた方とは別のポケットを漁って 袋に入った小さなパンを取り出した。そのまま座っている男の人に差し出す。
「これでよかったら」
「!!マジか…!!サンキューな、ええと、お前の名前は」
「恭」
「恭か…!!!恩にきる、」
男の人は嬉しそうに袋を開けて パンをあっという間に口の中へと放り込んでしまう。やっぱりすごくお腹が空いてたみたいだ。
途中で苦しそうに喉を抑えるから、座り込んで背中をさすってあげる。
「ッ、は、死ぬかと思った…恭、すまねぇな 会ったばかりなのに助けてもらってばっかでよ」
「気にしてないよ。おうち近いから、水持ってくるね」



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