◎ やさしいにおいと
ひく、と鼻を動かすと柔らかい良い香りが香ってくる。大好きな人が使ってる、確か柔軟剤の香り。堪能したくてモゾモゾ体を動かして、体を密着させると彼が起きたのか僕を振り返ってみせた。
「んー…はぁ、おはよう恭 どーしたのっ?甘えたくなっちゃった?」
「おはよう乱数くん。甘えたいんじゃないんだけど、」
「けど?」
「僕 乱数くんの匂いが好きだからもっと嗅ぎたくなっちゃって」
「え〜??なんかそれ、変態みたいだよ?」
少しだけ眉を下げてみせた乱数くんに、慌てて弁解をする。
「ちがっ…!!う、って 言っていいのかな、でも、落ち着くから嗅ぎたかったのはほんとだし、やっぱり変態ってことなのかな…」
どんどん自信が無くなって声がちっさくなっていく。すると乱数くんが吹き出して、楽しそうに笑い声をあげたあと 僕にキスをしてくれた。
「!!!」
「ジョーダンだよっ♪それにー、恭が変態だったとしても 僕は困らないしねっ♪どんな恭も、だーいすきだよっ?」
ぎゅう!と勢い良く抱き締められて 嬉しくて顔が熱くなる。ちょっとだけ力が強くて、苦しい気もするけれど そんなこと、ちっとも気にならなかった。僕にとっては乱数くんと居られることが至福なんだ。
「嗅ぎたいならもっと嗅いでもいいんだよっ?」
「えっ」
思ってもない提案に驚いて彼を見つめると、綺麗なお目々と視線が交わって 乱数くんは妖艶に笑ってみせた。
「その変わり〜、僕が恭に何しても許してねっ?」
悪戯っぽさも含んだ 茶目っ気のある声を聞きながら、服の中に忍ばされた手にまた幸福を感じて目を閉じた。
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