◎ 有栖川帝統生誕祭200707
『帝統、誕生日になるまで
ここにいてよ?約束だからね』
お誕生日は一番に祝いたいから。
そう言った僕に帝統は
『わかったよ』って言ってくれた。
だけど―――日付が変わる少し前。
夜中ということもあって
眠気に逆らえなかった
僕は少しうたた寝をしてしまった。
「―――ん、
はっ…僕、寝ちゃってた…
って、今何時?!」
慌てて飛び起きて時間を見ると
時計は深夜一時を回っている。
正直泣きそうだった。
帝統のお誕生日を一番に祝いたかったのに
寝ちゃうなんて……。
それに、帝統も リビングには見当たらない。
寝室にも行ってみたけれど
彼の姿は無かった。
「…。呆れて出て行っちゃったのかな」
不安が言葉になって漏れ出すと
あまりの不甲斐なさに視界が歪む。
「ッ…帝統…ごめんなさい…帝統……ッ」
ぐすぐす泣きながら手のひらで
顔を覆って座り込む。
今日は付き合て初めての誕生日だった。
だからケーキも手づくりなんて
しちゃったりして。でももう、食べてもらえないや。
僕がここにいてね、って言ったのに。
寝ちゃうなんて ほんとに大馬鹿だ。
暫くそのまま泣き続けていると、
不意に玄関の方から窓が開く気配がした。
「お 恭起きたのか」
声と共に現れたのは
いなくなったと思っていた帝統本人だった。
「ッ!?だ、いす…なんで…?
出てったんじゃ、」
「あぁ?出てくぅ?なんでだよ。
お前がいて、っていったんだろ」
「そう、だけど、、!
僕寝ちゃったから 愛想つかされたかと
思って…」
「あーのなぁ。
そんくらいで見捨てると思うのかよ?
ずっと待ってたんだぜ?
恭のこと」
そう言いながら帝統は僕のそばまで
やってくると座り込んで、
僕と同じ目線になる。
そしてゆっくり手を伸ばして
僕の目尻にあった雫を拭ってくれた。
「泣くなよ。俺はここにいんだろ?」
「ん。ごめん、」
「それより お祝いしてくんねーのか?」
「する。帝統…お誕生日おめでとう」
伝えたかった言葉を伝えると
帝統はニカッと笑って おう、と言う。
「帝統に会えて 僕はほんとに良かった」
「なんだよ急に。
せっかくのラッキーセブンなんだ、
湿っぽい話はナシだぜ?」
な?と笑う彼に つられて笑ってしまう。
自分の誕生日ですらギャンブラーな
彼には本当驚かされる。
だけど そんな自由な帝統が
誰よりも好きなんだ。
じっとしていると不意に手を握られて
ドキッとする。
「ケーキ用意してくれてる、って
言ってたよな?食べようぜ。
腹が減っちまってどうも気合が入らねぇ」
「ふふ、いいよ。
でも気合って なんの気合なの?」
「ギャンブル」
迷いのない即答に、また笑うはめになるのだった。
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