女主SS

去りし日々


二郎side

「よぉ 元気かよ」
そう言って病室を訪れる度
結…俺の好きな奴は
笑ってくれた。
「こんにちは二郎くん」
そう名前を呼ばれるだけで
どうしよもなく浮かれちまう。
「今日はなんのお話を
してくれるの?」
「んー…また赤点まみれだった、とか?」
「ええー大変じゃん
また先生に呼び出しされちゃうよ?」
「あー…実はもう」
「されたんだ」
「おう」
そう言って二人で笑う。
この何気ないやりとりが
スゲー好きで大切だった。








結と俺は同級生
隣の席になったのがきっかけで
仲良くなった。
「山田くん、だよね?
よろしく」
「おー。こちらこそよろしく」
そんな会話が始まりだったと思う。
ちっこくて可愛いやつ。
それが結の第一印象だった。

それから後 隣の席なこともあって
よく喋るようになっていった。

俺の呼び方は山田くんから
二郎くんへ昇格したし
帰り道がほぼ一緒なのがわかってからは
よく連だって帰るようにもなった。

結といると 楽しい。
それを恋だと自覚した頃。
結は突然倒れて
今みたく入院することになってしまった。

毎日、とはいかねーでも
来れる時に話しに来るのが
俺の習慣つうか。
お陰で結のお母さんとも
知り合いになっちまった。

「あら 二人は付き合ってないの?」
「「な、ないよ/ッス!!!」」
なんて二人で慌てて否定したりして
笑われた事もある。

好き、とか
いつ言えるかわからないでいた。
明日言うか 明後日言うか
ウンウン悩んで 明日 また明日
そうやって伸びちまって。

結が退院したあとでもいいか
なんて思いもして。


気付かなかったんだ。
気付けなかったんだ。
段々とやせ細っていくお前に。

『あの子 よく長袖着てるでしょう。
二郎くんに 気付かれたく
なかったんだと思うの』
そう涙ぐみながら
泣き崩れた結のお母さんに
俺は立ち尽くしかできなくて。
でも、それを知ってからは
よりいっそう結に会いに
行くようになった。
学校の帰り道 自然と足は病院へと向かっていく。

今日はなにを話そうか

何度も通いつめたある日
暗い顔のお母さんから告げられたのは

『結はね
死んじゃったの』

涙に混ざった言葉だった
真っ白なベッドに寝転ぶ
結からは 何の言葉も返ってこない
どんなに話しかけても
どんなに呼びかけても
もうお前はいないんだ。

好きだと言えないことが
んなに辛いとは思わなかった

あのとき言っときゃ何か
変わったのかな

さよならも言えずに終わった
俺とお前の毎日は
後悔の気持ちで彩られてしまった

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