MHA
 瀬古杜岳にて

結花によく似た女を拾った。抱き上げて適当な洞窟に移動させた後 横たわらせて、その辺に散らばっていた木を積んで火をつける。
抱き上げた女の肌が冷えきってたから。こいつが炎や爆破系の個性でもねェ限り 低体温で体調を崩すのが目に見えた。

火をつけた後は洞窟の奥に座って女を見た。
見れば見るほど結花によく似た女。俺があいつにあげた物と 同じ物を持った女。

ポケットに手を突っ込んで、さっき拾った藍色の箱を取り出す。中身を見るか悩んだが 見たところでどうするわけもない。
そのままポケットに仕舞い込んで 自分も軽く目を閉じ、休息を取ることにした。


(この女が結花とどういう関係性で 誰なのか 知ったところで俺がやる事は変わらねェ。)




女が目を覚ました時、俺がヴィランだったら逃げると言った。露骨に俺を警戒している女を尻目に、箱を渡して外に出る。
理由はねェ。ただ俺が居たらあの女はずっと ああやって警戒してんだろうからな。

出てすぐに木の上に身を置いたことも 下山するのを見届けたのも 深い理由は無い。




(……結花 もしお前が今の俺を見たら
お前もこの女と同じ反応をするのか?)


『とうやくんっ』

明るい声で呼ぶ懐かしいものが頭を過ぎって 目の下を親指で拭った。

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