MHA
 プロローグ2

プロヒーローに憧れていた事はあった。だけど私の個性上、戦って勝つヒーローより 皆を楽しませるほうが向いていると思っていた。
今だってそう。だから、今この状況にはあまりピンときてないところが多い。

私は今日から雄英の生徒になる。正しくは、一時的に雄英の保護化に置かれる 仮生徒。
数ヶ月前に置きた事件が発端で、警察から雄英の方に話がいったらしい。
世論的にも゛結城結花を保護すべきだ゛という声が強く、難色を示していた雄英が折れたのだと聞いた。
…とても申し訳ないなと思う。

────今から数ヶ月前。初めてのツアー最終日に事件は起こった。いつものように曲を歌い終わり、挨拶をしてはける。ライブが終わる、そのタイミングで 客席から悲鳴があがった。
悲鳴の先をみると、みんなの視線は関係者席へと向けられていて───そこに居るはずのお父さんとお母さんが居なかった。
代わりに、お父さんとお母さん゛だったもの゛が 肉として床に散らばっていた。辺りに漂う強烈な鉄の匂い 肉の破片 泣き叫ぶみんなの声 そのどれもが頭に焼き付いて離れないでいる。

『歌姫の目の前で起きた惨劇』
『狙われた歌姫!犯人の目的は?!』
『護衛のヒーロー 役に立たず』
なんてそんな好き勝手報道されている事も、雄英に迷惑をかけちゃうことになったのも 全部憂鬱だった。
ずっとお父さんとお母さんと、三人で幸せに暮らしていけると そう思っていた。

「お嬢様、もうすぐ雄英ですよ」
聞こえてきた声にハッとして外を見ると、これから通う事になる校舎が見えてくる。
「…表には記者がいるから 裏門から、って事だったよね」
「ええ。そしてくれぐれも門をくぐるまで顔を見せないように、と」
「うん」
制服の上から羽織ったパーカーのフードを深く被る。写真を撮られるのは嫌だったし これ以上雄英に迷惑をかけるのも嫌だった。
車を降りて1歩踏み出せば私の新しい生活が始まる。決してワクワクはしない 憂鬱で重くのしかかる感情の事は 今でもよく覚えてるくらいに強烈で、耐え難いものだった。
どれだけ心の中に、想い出の写真に呼びかけても
お父さんもお母さんももう居ない。私はひとりぼっちだ。

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