MHA
 ふらっと現れるひと

燈矢くんはあれからたまにおうちに来るようになった。
気が着いたらいつもリビングにいて、最初のうちは困った顔をしてたのに 3回目からはつまんなそうにお家を見渡して、4回目からは結花に色んな話をしてくれるようになった。

ある日、テーブルで向かい合って一緒にお菓子を齧りながら質問をした。
「燈矢くんは いつもなにをしてるの?」
「特訓。俺はヒーローになるんだって 前にいっただろ」
「ヒーローになるための特訓?」
「そ。見てろよ、」
そう言って燈矢くんが手のひらを胸元の高さに持ってって 小さな炎をみせてくれた。
まだ幼い私にはそれが゛個性゛で ゛マジックショー゛ではないことなんて、これっぽっちもわからなくて 目をキラキラさせながら彼を見てたように思う。
何より 寒くなり始めた時期だったから、彼の炎が暖かくて 当たらない様にそっと両手を伸ばした。

「燈矢くん、ほのお あったかいねぇ」
「…うん」
微かに頷いた彼の表情には気付かないまま 私はずっと 彼の中で紅く燃え盛る炎を見ていた。

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