MHA
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僕は、彼女の歌がとても好きだった。
かっちゃんにぐちゃぐちゃにされたノートを手に帰宅していた最中、通り過ぎた公園から微かに歌声が聞こえてきたのがはじまりだった。
(こんな所で誰かがうたってる…)
いつもなら気にもとめない、だけどその日はなんとなく、声につられるように公園の中へと足を運んだんだ。
人気のない広い公園、その中心地で 君はクルクルと踊りながら楽しそうに歌っていた。
その声と表情が、とても柔らかくて素敵で 素直に見惚れていた。聴き入ってもいたんだ。
きっと彼女は歌の個性があるんだ、そう思ってしまいそうな程 彼女の歌は心に沁み込んで、心が暖かくなっていく不思議な感覚があった。

…この日の事は、プロヒーローになった今でも鮮明に覚えている 忘れられない記憶だ。




────────これは 僕が彼女と出会って離れ離れになるまでの物語。

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