側にいてくれてありがとう

何度も愛し合って同じベッドで
眠りにつく。そんな風景が日常と化していた。
だらんと脱力して銃兎に寄り添うと
頭を優しく撫でられて
額にキスを1つ落とされる。

同棲するようになってだいぶ経つ今
昔からじゃ 考えらんねーくらい
お互いにでろでろだと思う。

銃兎は行為の最中も その後も
よく 愛してると言ってくれる。
俺も俺で あいつによく
甘えてしまうことが増えてきたし、
愛してると言われれば 俺もと
素直に返せるようになっていた。

…まだ恥ずかしい気持ちはあるけど
沢山愛してもらえる分、
俺も 銃兎に愛を返したい とか
柄にも無く思ったりして。

セックスの後に のんびり話すのも
好きなんだけれど、今日は
やけに眠くてしょうがない。
欠伸が出て、目を擦っていると
「寝て構いませんよ」と声がかけられる。
「わりぃ…さきにねる、」

訪れる睡魔に耐えきれず そのまま
瞼を閉じて 意識が遠のいていく中で
額にキスを落とされたのを感じ取っていた。

『おやすみ、恭』


―――――――――

――――――


意識が浮上したのは
それから何時間後だったのか。
暗かった空は少しだけ明るさを帯びて
カーテンの隙間から明かりが差し込んでいる。

もぞ、と少しだけ寝返りを打とうとして
上手く動けないことに気付いた。
自分の身体をみると、あいつの腕が
お腹に回って、抱きすくめられていた。
そのせいで俺の背中はぴったり
銃兎の身体とくっついている。

耳を澄ますと寝息が聞こえて
気持ちよさそうに寝てるのが分かった。
暫くは起きそうもないな、
と内心苦笑しつつ また寝直すかと
悩み始めた時。
ふと、あることに違和感を覚えた。

いつもないはずのものがあったんだ。
それは左手の薬指に存在していた。
指元で輝く、シルバーリング。

(これ…これって、!)

慌ててお腹に回されてる手を揺すって
少しだけ後ろを向く。
「銃兎っ!銃兎、起きろって、なぁ」
呼びかけると 煩わしそうに眉が寄せられて
ゆっくりと目が開かれる。
起こしちまうのは、そりゃ 申し訳ない
でも それどころじゃねぇ

「…なんです、朝から騒々しい」
「それは、わりぃ。けど これ!!
こんなの、いつくれたんだよ…?!」
言いながら左手をみせると、あぁ、と
気の抜けた声が上がる。

「本当は昨日
渡すつもりだったんです。
ですが眠そうだったので 寝ている間に
失礼したんですよ」
「…何で俺のサイズ、わかったんだ?
教えたっけ
つか聞きてーことがありすぎる、
何で今このタイミングで」

嬉しい半面 疑問が湧いてきて
首を傾げていると、やれやれ、と
肩をすくめられる。

「サイズは恭が
寝ている間に調べたんです。
タイミングは―――貴方の事ですから
覚えてないのでしょうね」
「……あー…もしかして、記念日、とか?」
有り得そうな事をテキトーに言ってみると
「ええ」と肯定が返ってくる。マジか。
あんまり日付を覚えるのが得意じゃねぇせいで
深く覚えたりすることもなかったが。
まさかこいつが覚えてたとはな。
少し申し訳ない気持ちにもなりつつ。

というか、待てよ?

「ってことは…お前と住み始めて
1年でもあるってことか はえーな、」
「その点については同感です。
一時はどうなることかと思いましたが」
その言葉に過去あったことを思い返す。

バディ解消されちまったり
婚約者ができたり 色んなことがあったな。

「…銃兎が居なかったら
俺どうなってたんだろうな
そう考えると、ちょっと怖い」

居なかったらきっとあのまま
結婚することになっていただろうし
そもそも、バディが無ければ
俺はずっと相手をとっかえひっかえしながら
フラフラと生きていたのだろう。
考えるだけでゾッとする。

心がざわついて思わず銃兎に
擦り寄ると、フッと笑うのが聞こえた。

「貴方にしては随分しおらしい
反応ですねぇ」
「悪ィかよ」
ムッとして返せば いえ、と返事がくる。
ったく。

…でもまぁ
こういう日くらい ちゃんと言わねぇと
ダメだよな。

くるり、と寝返りをうって
銃兎の方へと向く。

「なぁ銃兎」
呼びかけるとあいつの視線が
俺に向けられた。

「…いつも傍にいてくれてサンキュ」
「こちらこそ」
「その、なんだ
これからもよろしくな」
「勿論です。離すつもりもありませんよ」

そう言ったあいつにお互い笑い合うと、
どちらともなく顔を近づけてキスをした。
これ以上ないくらい幸せだった。


そして、翌日――
俺達が指輪をして出勤したことにより
署内がざわついたのはまた別の話。

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