&Thank youF

机に並ぶ、たくさんのごちそうを
争奪戦(主にじろくんとさぶくんが)しながら
賑やかに食べていく中で 向かいに座る
一郎さんがあ、と声をあげた。
どうしたんだろう?

「そういえば恭
すっかり渡しそびれちまったが――

これは俺からの誕生日プレゼントだ」

そう言っていつの間に用意したのか、
背中の後ろから 大きな赤い包装紙に
くるまれた 小ぶりの箱が差し出される。

「わっ いいんですか…!?」
「はは いいに決まってるだろ」
「ありがとうございますっ!!」
ぺこっと一礼して
箸を一旦おき、両手で箱を受取る。
箱は僕の両手に程よくおさまっるサイズで、
重さはそんなにない。何が入っているんだろう?

「あ、俺も俺も。
俺からはこれな」
そう言って僕に差し出される
青い中くらいの袋。じろくんからのプレゼントだ。

続いて横から「はい」と
黄色い包装に包まれた少し質量のある物が
膝に乗せられる。

「え、あ、じろくん さぶくん
ありがとう…!!
へへ 嬉しいな」

立て続けにもらって、すこし
吃驚しちゃったけれど
まさか三人からそれぞれに貰えるなんて
思いもしなかったから。
頬が自然と緩みっぱなしになる。

「今開けちゃってもいいですか?」
「あぁ。構わねぇよ」
「では早速…!」

じろくんから受け取ったプレゼントを
一旦さぶくんのと同じく膝に置いて、
ビリビリにならないよう丁寧に
赤い包装を解いていく。

中に入っていたのは白い箱で
それを開けると――――



「わ、アルバムだ…!!!」

中には新しいフォトアルバムが
数冊束になって入っていた。
僕は一冊手にとって、思わず前をみる。
「一郎さん、僕が欲しいって言ってたの
覚えててくれたんですね…!」

少し前に、一郎さんの前で
皆との思い出が欲しいと
溢したことがあった。
忘れてしまった分 取り返せない分
新しい記憶や想い出を
たくさん残していきたいって。

…それで辿りついたのが、
写真をいっぱい撮る ってことで。
写真はスマホでも撮れる分
僕はフォトアルバムが欲しかった。

スマホの写真は簡単にプリントできるって
さぶくんも言ってたからね。
僕にとってはカメラより先に
アルバムが最重要だった。

(どれがいいか迷ってしまって
結局買えないでいたのだけれど)


「誕生日にアルバムでいいのか
悩みはしたんだがな」
少しだけ肩を竦める一郎さんに
僕はぶんぶんと首を振る。

「十分です!!」
寧ろ十分すぎる程です。
「ありがとうございますっ!!」

prev / next


- ナノ -