▼ &Thank youB
無事クラッカーを確保し、
よいしょ よいしょと 気を付けながら
帰宅する。
ふうと一息ついて、
一旦箱以外の荷物を足元に下ろし
鍵を取り出した。開けると再び荷物を手に
お家へと入って行く。
「ただいま戻りましたっ」
大きな声でそう言えば、
リビングのドアがすぐにあいて
じろくんがひょっこり顔を覗かせた。
「おー。おつかいサンキュ」
「いーえ。依頼のついでだったし
平気だよ。とりあえず先に卵冷蔵庫に入れちゃうね」
そう言ってリビングの方向へ足を踏み出した 瞬間
「いや待て」と制止がかかる。
ピタッと足をとめ、首を傾げた。
制止をかけたのは他の誰でもない
じろくんだ。
「?冷やさないの?常温になっちゃうよ?」
「俺が入れとくから、とりあえず
荷物は全部そこに置いとけ」
「???」
ますます頭にハテナが浮かんで首を傾げてしまう。
「依頼の箱は…?どうするの?」
これもこのままおいちゃっていいのかな?
わからなくて念のため聞いてみたけれど、
じろくんは深く頷くだけだった。
(うーん…?)
わけがわからずに悩み続ける僕をみて、
じろくんは眉をクイッとあげる。
「恭 兄貴の言うこと聞けねぇのか」
「聞けない訳じゃないけど…」
「けどもでもも受付ねぇかんな
おら、とっととそこに置いて
鞄も部屋に片しとけよ」
シッシ、と追い払うような素振りに
どこか違和感を覚えつつ 渋々
言われた通りに荷物たちをその場に置いて
自分の鞄だけをもって部屋へと帰っていく。
(なんだか変なじろくん。
いつもならあんな風に言わないのにな)
無意識に溜息が一つこぼれて、
まぁいいや と階段を上って
自分たちの部屋へと帰っていく。
さぶくん――は、いなかった。
鞄はあるし、靴もあったから帰宅しているはず。
リビングとかにいるのかな。
そんなことを考えながら荷物を机に置いて、
ポケットからスマホを出すと同時に
『スポッ』と音が鳴る。ラインだ。
(誰からだろう…?)
画面をみると、そこには『一郎さん』の文字。
えっと、なになに…『30分後リビングに集合』
読み終えた所で、もう一つラインが届く。
『それまで部屋待機』
(部屋待機…?)
一体30分後になにがあるっていうんだろう?
ご飯時ではあるし――そのころ時分に
できあがるってことなのかな。
僕だけ部屋待機 は謎だけど。
今日の一郎さんも じろくんも
どこかおかしいような。そんな気持ちを抱えつつ
一郎さんの言うことに間違いはないから、と
納得をして 椅子に腰を掛ける。
あと30分。その間は さぶくんから借りた
小説を読んでいよう。
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