02.

弟が増えた瞬間。それはいつだって
忘れたことが無い 俺の大事な想い出だった。
今だってそう。三郎はクソ生意気だし、
恭も恭で 最近妙に三郎に似て来て
俺に対する扱い雑になってきてねーか?って
思うんだけどよ。それでもやっぱ
可愛い弟に変わりねぇんだわ。
きっと、兄ちゃんも同じ気持ちだと思う。

ちっせぇ時の恭がコケて
泣くんじゃって全員でヒヤっとした事。
コケても泣かなかった恭が
三郎の卒園の時、寂しいとギャン泣きかました事。
今思うと色んなことがあったなーと
思い返しては懐かしさに浸る。

昔の恭は、『じぉくん、』って俺のことを呼んでて。
舌ったらずな呼び方が可愛いと思っていたのを
よく覚えている。三郎や兄ちゃんのことは普通に呼べる癖に
何故か俺だけ゛じ「お」くん゛なんだよなぁ。

今ではすっかり普通の呼び方になっちまったけどよ。
いや。いつまでも舌ったらずでいられても困るから
これであってんだ、うん。ちょっと寂しい気もすっけど。


三郎然り 弟の成長っつーのは
感慨ぶけぇもんがあって、時折じーんとして
しまうことがある。恭に関して言えば
呼び方が変わったこともだし、身長…は、
いう程変わってねぇな。これ言うと嫌がるんだろうけど
俺よりデカくなる恭とか これっぽっちも
想像できねぇ。三郎よりデカくなる事すら
想像つかねぇから、身長はさておくとして。

後は、そうだなー。
うっかりしがちだったのに、萬屋の手伝いも
ちゃんとできるようになったこととか。
料理も少しずつ できるようになってる気がするし。
些細なことかもしんねーけど
こーいう変化が 間近で感じられんのは
家族の特権だよな。


正直、恭が全部忘れちまった時とか
俺みてビビりまくってんの見た時は
ショックすぎて固まっちまったけど、
これから先 何があっても
例えまた 恭が俺らのこと忘れたとしても。
全力で思い出させてみせるし
思い出してくれるって そう信じられるから
恐いもんとかねーんだ。
全員でなら 乗り越えていける 俺らならやれる。

絶対的な信頼と 確信を抱いて
賑やかな日々がすぎていく。

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