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▼ 15.話し合いのあと

屋上に着くと真っ青な雲一つない空…
とはいかねーけど青くて綺麗な空が
広がっていた。所々に浮かぶ雲が
綿あめなんかに見えなくもない。
とか言うとその面で何言ってんだ
って引かれちゃうから言わないでおく。

「つーかさ 他では言いづらい話って
なんなわけ?」
俺に背を向けたままの山田に問うと、
あいつはこちらを振り返って
口を開いた。
「勘違いされてんだよ」
「?何を」
「お前と付き合ってんじゃねーかって」
「はあ?誰と誰が」

俺は前の子に振られてから
絶賛フリーなんだが。
素で首を傾げていると、
山田の眉間にシワがよる。
(あ?なんか怒ってるっぽい…?)

「なぁ 何怒ってんの」
「おめーが思ってたよりも
バカだからだ」
「!」
まさか赤点常習犯補習常連
俺と同列の山田にバカって
言われると思わなかった。
けど、こいつが理由もなく
怒りそうじゃない事は
短い付き合いの中でも分かってる
つもりだった。

「俺がバカかどうかは
今さておいてさあ
分かるように話てくんねー?」
肩を竦めてみせると、はぁと深いため息が
落とされて 山田は一歩俺の方に踏み出した。
そして声を潜めて言う。

「…今日登校したら」
「うん」
「女子に囲まれて」
「うん」
「佐々と付き合ってんのかって
聞かれたんだよ…」
「…うん?何で?」
「ッお前、今日俺のことで何か
女子に聞かれただろ?」
「うーん…」

なんだっけなぁ。
俺も山田と一緒で、朝女子に囲まれて――
あー、もしかして、

「お前と抱き合ってたのかって聞かれた。
から うん、つって事の事情を話そうとして…」
とそこまで喋った所でネクタイを思いっきり
引っ張られてぎゅっと首が締まる。

「ッ!!ばっ、何すんだ…よ…っ」
「バカはこっちの台詞だ!!
それだよ ぜってーそれ。
お前がンなこと言うから俺とお前は
゛そーゆー関係゛だと思われてる」
「って言われてもなぁ。
ただの女子の早とちりじゃん?」
「そうだけど…!!女子の噂話が
回るのはえーのはお前だって
わかってんだろ?」
「まぁ」
「しかもダチにまで広がる」
「えー。ダチなら嘘だってわかって
くれるっしょ…?多分」
「うるせー。俺は冗談でも言われんの嫌なんだよ。
だから授業が終わったら女子に全部
話てくれよな」

真剣な目でまっすぐに言われると
俺はもう頭をかくしかできなくて、
「わかった」とだけ呟く。
「つうかさ この話だけなんだったら
休み時間でもよかったんじゃねぇ?
1限丸々サボることあったかよ?」
だって要件これだけならもう終わりじゃん。
まさかここから授業に出るつもりなのか?
じっと山田の返事を待っていると、
あいつは目を泳がせた後に伏せてみせた。

(はーん…)

この様子だと、この後のことなんか
何一つ考えちゃいなかったんだろうなぁ。

(俺にバカっつったけど、山田
やっぱりお前も人のこといえなくねぇ?)
と思ったのは内緒だ。ま そんなお前だから
一緒にいて気が楽なんだろーな。

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