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▼ 13.女子の包囲網

翌日。登校するなり俺は
教室前で待ち構えていた女子たちに
取り囲まれることになった。
なんだよ人生何度目かのモテ期到来か?
なんて思ってたけど 実際は
そんな甘いもんじゃねーみてーで。
何故だか周囲は腕組みをしていたり、
仁王立ちだったり 見定めるような
目をしていた。居心地悪いったらねぇ。

すると真ん中に立っていた
リーダー格のような女の子…
誰だったっけなぁ、気が強くて
巨乳で可愛い…隣のクラスの…
沼澤さん――だったか、が
一歩踏み出して俺に詰め寄った。

身長の低い彼女は自然と俺を
見上げる形になって、俺も視線を合わす。
「ねぇ 佐々くん」
「うん?」
「山田くんと抱き合ってたって
ほんとなの…?」
「うん………?」
抱き合ってた…?
目が点になる。いや でもまぁ、
不慮の事故とはいえ演技で
抱き締めてたのはマジだし、
抱き合ってたになんのか

「ねぇ、答えてよ」
じり、と沼澤さんが距離を
詰めてきて これ以上近付けは
彼女の大きな胸が俺に当たってしまう為
なんとか後ろに下がりたかったが、
女子に取り囲まれているせいで
一歩下がることもできなさそうだ。

「佐々くん、どうして
答えてくれないのっ…?!」
沼澤さんが言ったのを皮切りに
周囲からも「そうよ!」などと
声が上がり始める。
(なんだってんだ…)

困り果てて頭をかく。
でもまぁ、正直に昨日の経緯を言えば
分かってもらえるだろうと
そう思っていた。

「んー。ほんとほんと、
つってもあれは――」
不慮の事故で、と続くはずだった。
のだが。

沼澤さんは頭に手を当てると
なんと俺の前で意識を失い
倒れてしまった。
床に落ちていく体を慌てて支えて
彼女が汚れるのを阻止したものの、
なんだか周囲がざわついて
悲鳴のようなものさえ聞こえた気がする。

『可哀想…沼澤さん
佐々くんのこと…』
『私山田くん狙いだったのに
どうしよう……』

(???なんだ?
なにがどうなってる?)
ただただ困惑する俺をよそに
女子達は互いに互いを支え合ったり
おばけでも見たような顔をして
辺りから去っていく。

(???なん、だったんだ…?)
さっぱりわかんねぇ、つかそれより
腕の中のお姫様をどうすっかな。
一番の問題はそこに思えた。

とりあえずお姫様抱っこ
(これが個人的に一番運びやすい)で
保健室まで向かう事にする。
『佐々、次は沼澤さんかよ〜?!』
『盛んじゃねーぞ〜!!』
なんてくだらねーヤジが飛んできたものの
うるせぇったらねぇ。
気を失ってる子襲うほど飢えてねーっつの。

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