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▼ 9.準備期間

俺と山田の譲れない戦いは
大分ぐだぐだして見苦しいので
割愛するとして。結果だけいうと
俺が女装するハメになった。

「納得いかねぇ…けど
決まった以上はちゃんとやる、」
「おう」
「じゃんけんの勝敗は絶対だからな」
「まさか18回あいこするとは
思わなかったけどな」

なんてだらだらくっちゃべっていると、
男子連中が集まってる輪から
「おーい」と声がかけられて
そっちに視線をやる。
「脚本、とりあえず演劇部のやつが
作ることになったから でき次第
全員に渡すな」
「OK」
「因みにどっちが女役?」
「俺」
「なんだ佐々かよ」
うえ、と言わんばかりのダチからの反応に
うるせえ俺だってやりたかねぇよ
と内心毒づく。

女子はと言えばこの話が聞こえたのか
「山田くんの王子様〜!!」と
色めき立っている。畜生。俺もああやって言われたかった。

「なぁ山田 やっぱり役変わっとく?」
「お前なぁ。じゃんけんの勝敗が絶対だって
言ったの佐々だろーが」
呆れたような声に がっくりと肩を落とす。
返す言葉もなかった。


それから一週間後―――
脚本を担当した男から男子全員に
台本が配布されたんだけど…

「なぁ山田 シンデレラって
林檎とか出てきたっけ」
「…俺もちゃんと知ってるわけじゃねぇけど、
林檎は白雪姫とかだった気がする」
「つかちゅーってなんだよ
本当にしろ、とか何を書いてんだ
アホかよぜっ   てぇやらねーわ!!」
机に置いてある台本をぺしん!と
勢いよく閉じて山田をみると
いつかと同じ様に、微妙な顔をしていて。

「なんか山田っていっつも
ビミョーな顔してんよな」
「いや、これはどう反応していいか
素直にわかんねぇだろ」
「まぁな。
…絶対しろとかかいてあるけど
ぜってーすんなよな」
「したくもねぇよ」
「ウワ辛辣 でも俺も一緒
フリでいこうぜフリでな」

なんて話し合いながら、採寸したり
放課後練習を繰り返したりの日常が始まった。

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