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▼ 7.なんでそうなる

「――って、ことで 劇の主役は
佐々くんと山田くんに決定だから!
よろしくね!!」

そう言って仁王立ちし満面の笑みを浮かべているのは
うちのクラスの女委員長…今時珍しそうな
眼鏡のよく似合うおさげの
典型的・いや古風的?な委員長・久留井(くるい)だ。
つかそんなことはどうでもいい。

机に上半身を預けながらゆるゆる挙手して
口を開く。
「よろしくって言われても
俺やる気ねーんだけど。
大体なんで俺と山田な訳?」
「女子の総意!」
「…わけがわからん」

はぁ、と頭をかいて山田をみると
あいつもあいつでなんとも言えない顔をしていた。

時は2時間前に遡る。

実は今日は間近に控えた学際の
催し物の発表で、俺らの学校はそれぞれ
1学年につき 何をやるかはくじ引きで
強制的に決められていた。

お化け屋敷・舞台・売店(自由)とか、とにかくまぁ色々。
やったことない事も満遍なくできるように
つー方針らしいんだけど。それはどうでもよくて。
問題は久留井が舞台を引き当ててしまった事と、
なおかつ その悲劇が俺と山田に降りかかりそうな事。

しかもその降りかかり方がちょーめんどくさかった。

これまた2時間前、舞台と決まったと知らされた時
クラスメイトの男 1人が余計なことを言ったのだ。
『可愛い女子すくねーからやってらんねーよな』
――まぁ予想つくと思うけど、全女子を敵に回した
ソイツのせいで 敵意が全男に向けられるハメになる。

委員長・久留井を筆頭に 気の強い女子達が
それぞれに声をあげて言う。
皆腕組みをし睨んでいて、迫力があった。
『そういうなら私達、裏方に徹するわ。
舞台の脚本から特訓何から何まで
男だけでやりなさいよね!!』

ぴしゃりと言い放った久留井は、
正直俺からみてもフツーに恐かった。
その後に続いて他の女子達も声をあげていく。
『つか、うちらだってお前みたいな
芋とやりたくねーって話じゃない?』
『わかる。あと芋同士の絡みみてもしょうがないもん』
『主役は私達で決めようよ』
『『さんせーい!!』』

教室中に響き渡るキャッキャとした声とは裏腹に
男子連中は顔が青ざめていっていたのを覚えている。
でもま俺は関係ねぇ、と思って
机に突っ伏して寝てたんだ。が。

ここで冒頭に戻る。
何故か女子達の案により主役は俺と山田になりそう
というわけだ。なんで。

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