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この日は朝から大雨みたいで、
お空ではぴかりと光ってゴロッという
低くて大きな音が鳴っていた。
僕はといえば、起きてすぐに
その音に気づいて 寝室の
カーテンを開けて 外を見たんだ。
ぴかっと光それが、人生で何度目かの
雷で心のなかでこっそり感動する。
こんなに近くでみたのは初めてだ、と思った。
「…朝っぱらから何してやがる」
低い声が聞こえて、振り返ると
左馬刻さんが上半身を起こしているところだった。
ぺたぺた走ってベッドの左馬刻さんに駆け寄る。
「雷が鳴ってるからみてたんです」
「あぁ。そういやうるせーな」
「左馬刻さんも雷、みる?」
「いやみねーよ。つかなんでそんな
楽しそうなんだ」
「楽しそう?」
そうかなあ。わかんなくて首を傾げる。
あ、でも。いつもと違う゛雰囲気゛の空に
ちょっぴりドキドキするのはあるな。
1人納得していると、左馬刻さんが
隣をぽんぽんと叩いてみせた。
「?」
「此処。座れ」
「はぁい」
返事をして、すぐに
左馬刻さんの隣に座る。
勢いよく座ったせいで、ベッドがぼふんとはねた。
「今日はお前に会わせたい奴がいる。
だからそいつの言う事をよく聞いとけ」
「??誰、それ?」
会わせたい人って?
言う事を聞くって?僕にははてながいっぱいだ。
左馬刻さんは僕の顔をみながら続ける。
「――お前を保護してくれる奴だ」
「保護?」
なんのことなのか さっぱりわからない。
僕を 守ってくれる人、ってこと?
相変わらず首を傾げてばかりの僕に、
左馬刻さんは視線を外して
カーテンが開いたままの外を眺めていた。
大粒の雨が降る音だけが部屋に響く。
「―――とりあえず、朝飯にすっか。
先にリビングに行っとけ」
「リビングって?」
「昨日飯食ったとこだ」
この日 僕はリビングを覚えました。
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