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▼ 362.3

恭side

目が醒めると僕はベッドの上にいた。
目を擦りながらお布団から抜け出して
部屋を出ていくと、ソファに座っている
背中がみえた。

「左馬刻さん」

声をかけると、「起きたか」と
言葉が返って来る。
僕は左馬刻さんの横に行って
ソファに座った。
左馬刻さんは僕の方をみることもなく
ただじっと下を向いていた。
まるで何か考えているみたいだ。

邪魔してはいけない、そんな気がして
僕はソファに座ったまま
あしをぶらぶらさせた。
暫くの沈黙の後、左馬刻さんが口を開く。

「お前 腹は」
「お腹」
「空いてねぇのかって。
つかメシちゃんと食ったのか」
こくんと頷く。
「冷蔵庫の中にあった
チーズってやつを食べました」
「あ?そんだけか?」
「うん」

中は多い訳じゃなかったけれど
みたことないのばかりで、
とりあえず一番近くにあったのを
食べたんだ。

「んなモンじゃ腹ふくれねぇだろうが」
呆れたような声に、何かお返事しないと
と思っている間にタイミング良く
お腹の虫が鳴る。

゛ぐう゛

「…はぁ。なんかテキトーに
作ってやっから待ってろ」
気怠そうにそういうと、
左馬刻さんは立ち上がって、冷蔵庫が
ある方へと向かって行く。
僕も一緒に立ち上がって、
後ろを追いかけていった。

するとくるりと振り返った赤い目と
視線が交わった。
「待ってろっつったろうが」
「どこにいたらいいの?」
「さっきの所。ほらさっさと戻れ」
「はーい」

お返事をして、踵をかえして
ソファに戻る。何か作ってくれるって
言ってたけど 何を作ってくれるんだろう。
そわそわ。わくわく。楽しみだなあ。
ころんとソファに寝転がって、完成を待つ。

その日、左馬刻さんが作ってくれたのは
チャーハンだった。
(美味しいね 先生たちが作る
ご飯のなんばいも美味しいや)
と こっそり思ったのは内緒だ。
先生に怒られちゃうかもしれないからね。

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