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▼ 4.だるすぎる昼下がり

『えー今日はテスト期間に備えての
自主学習とする!』
先生がそう言ったのはかれこれ
数分前のことなんだが

「はぁ――んなもんやってられっかっての」
机の上に伸び切って倒れ込む。
だるい。俺は勉強が好きじゃない。
なんとなく横をみると、
机に向かってペンを握ってる
山田がみえた。嘘だろ…
「山田、お前以外に勉強熱心なのな…」
信じられない、そういう思いを込めて言うと
たれ目のオッドアイがこっちに向けられる。
「意外ってなんだよ」
「だってお前も俺も
赤点じょーしゅーはんだろ?」
話したことはなかったけど、
補習で常に一緒だったのは覚えてんだ。

なのに。
「まさかお前が勉強するタイプだったなんて。
なんか裏切られた気分だわ」
机に片肘をつきながら言うと、
「好き勝手言ってんじゃねーと」と
ぼやかれた後、山田は自分の机の上に
あったノートを手にとってこっちに向けた。
「ん」
「あ?なに」

ノートに目をやると、そこに書かれていたのは
数式でも言葉の羅列でもない。
いや、言葉は言葉か そこにあったのは
明らかにリリックと呼ばれるものたちで
ああそういえばこいつブクロ代表だったと思い出す。

「お前よくそういうの思いつくなぁ」
「勉強はそんなに…だけど
こういうのはすぐ出てくんだよ」
「ふーん。才能ってやつかねぇ。
つか俺話かけない方がよかった?」
リリックの邪魔しちまったな
と思ったけど あいつは首を横に振った。
話かけてもよかったらしい。

「今集中力きれたとこだから
別にいーって」
「ふは 集中力って、まだ10分くらいしか
たってねーじゃん」
「それを言うなら佐々も
なんもしてねーだろうが」
「俺は元々勉強向いてないんだよ」
「どやるとこかよ」

くだらねー話をしながら、いつの間にか
お互い向き合って いよいよ勉強そっちのけで
雑談が進んでいく。
やっぱり勉強よりこーやってダチと
つるんでる方が圧倒的に楽だしイイよなぁ。
と思っていた俺達は まだ知らなかった。
後でノート提出が待っているということに。




「一体この1時間お前らは何をしてたんだ!!
出してないのは山田と佐々だけだぞ!!」
「「すんません」」

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