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▼ おへやについて

お兄さんについて行くと
初めて見る光景にわくわくがとまらなかった。
マンション、っていうものは
こうなっているんだ なんて思ってたら
お兄さんが立ち止ってこちらを向く。

初めてお外に出ることをいったら
腑に落ちない顔をしていた。
僕にとってはそれが不思議で首を傾げてしまう。
僕はこういう゛もの゛なんだって
先生たちがいってた。
僕はお外にでない゛もの゛で、
ただ研究のための゛もの゛だって。
だから、これが普通のことなのにな。

―――――

―――――――――

再び歩き始めて辿りついたのは
沢山ある扉の中の1つで、
お兄さんは碧棺左馬刻 というらしい。
左馬刻さんは
鍵を開けて中へ入っていった。
僕もその後を追っていく。

「とりあえず
タオル持ってくっからそこで待ってろ」
こくんと頷いてその場に立ち尽くす。
すると直ぐにバスタオル片手に戻ってきた。
左馬刻さんは僕にタオルを差し出す。
僕は目を丸くして首を傾げた。

「ん」と言いながら再びタオルが差し出される。
「?」
「拭けよ」
「僕 自分で身体拭いた事ないです」
だからどうやって拭いていいかわからない。
素直に話すと 左馬刻さんはぎょっとした顔で
口を閉ざした。僕、おかしなこといっただろうか。

「左馬刻さん 僕、おかしなこと言いましたか」
「はぁ…おかしいつうか変なとこしかねぇよ」
「へん、」
施設にいる時は 常にお世話係の先生が
体調管理も拭くことすらやってくれていた。
僕にとっては普通のことなのだけれど、そうか。
これは へん、っていうのか。
1人納得していると、ぱさ、と頭にタオルが乗せられて
ゆっくりと頭を撫でるように拭かれていく。

「ったく。俺様に拭かせるなんざ
テメェくれぇのもんだ。お前年は」
「えと 先生は16だって言ってました」
「先生?まぁいい。16で拭き方が
わかんねぇなんてのはやめろ」
いいな、と念を押す様に言われたものの。
拭いてくれる手つきは優しくて驚いた。

(…左馬刻さんの拭き方
先生たちよりずっと優しい)

この時、『これからも拭いてもらおう』
と密かに決意した。
だってふかふかのタオルが気持ちいい。
優しい手つきだって、
十分すぎるくらい心地のいいんだもん。

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